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センサーやAIの進化で難作業を自動化、ロボットの活躍の場はまだまだ広がるMONOist 2024年展望(1/2 ページ)

製造現場に限らず、ますます深刻化する日本の人手不足。ただ、技術の進化によってこれまで人が行ってきた作業の自動化も可能になってきています。

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 まずこの場をお借りして、能登半島地震に被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

 以前海外出張に行った折、外国の記者に「現地ではどんなことが話題になっているのか」と聞くと、流れで「それで日本ではどんなことが話題なのか」と聞かれました。今、日本では何がトピックなのか、つたない英語で政治や経済について語る気もなく、またそんな答えも求められていない気がして、はたと考え込んでしまいました。絞りだした答えは、人手不足であり、人口減少でした。

2050年には生産年齢人口はピーク期の6割に

 人手不足によるバス路線の減便、廃止やコンビニエンスストアなどの閉店といったニュースをよく見かけるようになりました。ニーズはあっても届けられない、サービスが提供できない事態が起こってきています。

 改めて振り返ると、労働の担い手となる日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は1995年に8726万人でピークとなって以降、少子化により減り続けて2023年には7401万人となり、2050年には2021年比で約30%減となる5275万人になると見込まれています。日本の総人口も2008年の1億2808万人をピークに減少を続けており、減少幅も毎年拡大しています。

 採用が多かったバブル期に入社した世代が間もなく定年を迎える一方、その後のバブル崩壊で採用が絞られたため、人材の年齢構成もいびつになっている企業は少なくないはずです。近い将来、これまで経験とノウハウを蓄積してきた人材が退職していく一方、担い手となる人材は限れています。さらに市場ニーズの多様化によって多品種少量生産が進み、大量生産に比べて作業者への依存度が高まっています。

高精度化するセンサーがロボットに感覚を付与

 製造業において必要となるのは、さらなる自動化となります。2023年に行われた「2023国際ロボット展」においては、このヒントになり得る展示が多数ありました。

 1つは高精度化が進んでいる力覚センサーを用いた難作業の自動化です。力覚センサーとは、さまざまな方向から加わった力と、回転するトルクの大きさを検知することができるセンサーです。

 決められた位置に置かれたワークに対して、決められた動作を素早く正確に繰り返すことに優れていたロボットですが、狭い隙間に何かに差し込むなどワークとの接触時に繊細な力加減が必要な動作については人による手作業に依存していました。

 セイコーエプソンでは2023国際ロボット展で、水晶デバイスを使用した独自の力覚センサーを活用し、ロボットによる「黒ひげ危機一発」のデモンストレーションを披露しました。ご存じの方も多いと思うので「黒ひげ危機一発」の詳細は触れませんが、力覚センサーを搭載したロボットは持つ剣が樽に当たった際の反発を検知すると、力を弱めて樽の表面に沿わせて剣を移動、反発力がなくなると穴と認識して剣を挿入するというものです。

 樽に剣を指す動作を従来のロボットで行おうとすると極めて正確な位置決めが必要ですが、力覚センサーを用いることでその手間を簡略化できます。

 ヤマハ発動機でも開発中の7軸の協働ロボットが、内蔵の力覚センサーを活用してコネクターの抜き差しや、複雑な曲面の研磨を行うデモンストレーションを行いました。

 また、赤外線とAI(人工知能)モデルを活用したThinkerの「近接覚センサー」は、非接触で対象物の位置や形を把握できるのが特徴です。ロボットのハンド部分に付けることで、従来のカメラを使ったシステムでは難しかった鏡面や透明になっている対象物のばら積みピッキングが簡単にできるようになります。

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7軸の協働ロボットが研磨動作などを披露[クリックで該当記事へ移動]
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近接覚センサー「TK-01」を搭載したロボットハンド「Think Hand F」による透明の試験管をつかむデモ[クリックで該当記事へ移動]

 このようにロボットに感覚をもたらすセンサーの進化が続いており、これまで人に頼ってきた作業の置き換えが可能になってきています。

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