マイクロソフトにWindows以外のOSは無理?「Azure RTOS」は「Eclipse ThreadX」へ:リアルタイムOS列伝(42)(2/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第42回は、第4回で紹介した「Azure RTOS」がMicrosoftの手を離れて「Eclipse ThreadX」としてオープンソース化される話題を取り上げる。
機能安全規格を満たしたコンポーネントをオープンソースで提供するには
さて、今回の寄贈に当たり、MicrosoftはAzure RTOS(というかThread X)の全てのコンポーネントをまとめて提供した(図3)。
特徴的なのは、「TraceX」(これは開発用のTrace機能なので、まぁ本番機には入らないだろう)以外は全て機能安全規格を満たしていることで、ThreadX本体を含む全てのコンポーネントがIEC 61508 SIL-4とISO 26262 ASIL-D、さらに医療機器ソフトウェア向けとなるIEC 62304 Class Cに準拠しており、「NetX Duo」はさらにセキュリティ規格であるEAL 4+やFIPS 140-2などにも対応している。通常この手の機能安全の担保に関しては、その要件の厳しさ(OS/コンポーネントの側自身にもメンテナンスやサポートが必要になる)から有償で提供するのが一般的だ。OSベンダーはその収入によって機能安全に関わるサポートのコストを賄う形になっている。
この「機能安全パッケージは別」の代表例が連載第1回で取り上げた「Amazon FreeRTOS」(最近名称はFreeRTOSに統合された)である。
FreeRTOS本体そのものはFreeRTOS.orgないしGitHubから入手できる。FreeRTOSに加え、FreeRTOS-Plusもここからやはり無償でダウンロードできる。ただし、機能安全に対応したバージョンのFreeRTOSはここからは入手できない。
機能安全版を扱っているのは連載「IoT観測所」で紹介した「SafeRTOS」となる。これはドイツのWITTENSTEIN high integrity systemsが提供するもので、商用ライセンスと併せて提供される格好だ。今後はEclipse Foundationがこうした機能安全の認証(Certification)を維持するために必要な費用を負担する格好になるわけだが、それをどのように行うのかは後述する。
さて、そのEclipse Foundationの方であるが、現在移管作業が開始されている。現在はコードとドキュメントの移管、再ライセンス手続きおよび商標の割り当て作業を行っている最中であり、これとは別に今後の開発体制に向けてThreadXのコード開発に携わった経験のある開発者を探している。
既にこの開発者についてはCypherbridge SystemsとPX5、Witekioが手を上げており、今後はMicrosoftでAzure RTOSに関わっていたエンジニアも参画していく(そのエンジニアが引き続きMicrosoftに在籍したままかどうか? はちょっと謎だが)ものと思われる。Eclipse Foundationとしては、2024年1月末をめどとして、最初のEclipse FoundationによるThreadXのリリースを行うことを意図している。このリリースは、MIT Licenseに基づく形で行われる予定であることが既にアナウンス済である。
こうした動きの主体となるのは、今回の移管のアナウンスに先立ち2023年10月17日に設立された、ThreadX Interest Groupである(図4)。参画メンバーとしてこの時点で手が上がっていたのはAMD、Arm、Cypherbridge Systems、Ericsson、Microsoft、NXP、PX5、Renesas Electronics、Silicon Labs、STMicroelectronics、Witekioの11社である。
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