軌道上衛星におけるエッジコンピューティングの実証に合意:エッジコンピューティング
Space CompassとMicrosoftは共同で、軌道上衛星のコンピューティング環境で動作するソフトウェアの開発と実証に取り組む。地球上の特定場所における船舶を、衛星からリアルタイムに検知するアプリケーションを開発する。
Space Compassは2023年12月5日、軌道上衛星のコンピューティング環境で動作するソフトウェアの開発と実証について、Microsoftと共同で取り組むことに合意したと発表した。Microsoftと日本電信電話(NTT)が締結した、デジタルソリューションの実現に向けた戦略的提携の一環として実施する。
衛星データをリアルタイムに地上のクラウド基盤で分析するには、観測衛星とその基盤をつなぐネットワーク容量や遅延などの課題がある。それらを解決するため、衛星上で衛星データの分散処理や分析をするスペースエッジコンピューティングが必要となっている。
今回、両社は共同で、分野を超えて取り組むCo-Engineeringチームを設立。地球上の特定場所における船舶を、衛星からリアルタイムに検知するアプリケーションの開発に着手した。
開発には、Microsoftの宇宙空間向けソフトウェア開発プラットフォーム「Azure Orbital Space SDK」を活用する。軌道上の衛星での計算機やセンサー、通信デバイスを仮想化した環境で開発からテストまで実施することで、シームレスに衛星コンピュータを利用できるようになる。
船舶検知のアプリケーションは、2024年に打ち上げ予定の観測衛星「YAM6」上のコンピューティングリソースに実装し、軌道上でスペースエッジコンピューティングの効果を検証する。今後は、さらに多くのユースケースに基づくアプリケーションにも取り組む予定だ。
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