燃料アンモニア輸送を目的とした定期用船契約を締結:サプライチェーン改革
日本郵船と三井物産は、大規模燃料転換の実証試験に用いる、燃料アンモニア輸送の定期用船契約を締結した。同契約を契機に、アンモニア市場拡大に備えた海上輸送の体制整備を進める。
日本郵船は2023年12月6日、三井物産と、燃料アンモニア輸送の定期用船契約を締結したと発表した。日本郵船が保有する「BERLIAN EKUATOR(ベルリアン エクアトール)」が同契約に使われる。
BERLIAN EKUATORはパナマ船籍で、全長169.9m、全幅27.4m。積載容量は約3万5500m3だ。同船が輸送する燃料アンモニアは、JERAが2023年度中に実施予定の碧南火力発電所4号機(愛知県碧南市)における大規模燃料転換の実証試験に用いられる。日本郵船は、今回の契約を契機に、アンモニア市場の拡大に備えた海上輸送の体制整備を進める。
碧南火力発電所4号機での実証試験は、燃料アンモニアを20%転換するというもので、大型商用石炭火力発電機で大量のアンモニアに燃料転換する実証事業は世界初だという。
日本郵船は2023年11月に「NYK Group ESG Story 2023」を発表し、2030年度までに2021年度比で同社グループの温室効果ガス(Scope1+2)排出量を45%削減することを発表。また、2050年度までに、同社グループの温室効果ガス(Scope1+2+3)総排出量をネットゼロとする目標を掲げている。
目標達成に向け、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアを燃料とする船舶の研究開発を進めるなど、同社は燃料アンモニアのバリューチェーン確立に取り組んでいる。今後も同社グループは、アンモニアサプライチェーン事業に積極的に参入し、脱炭素社会に寄与していく。
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