生成AIでデータセンター需要が急伸するマーベル、車載イーサネットにも注力:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
マーベルジャパンが注力する4つの市場の動向や有力製品を中心とした事業戦略などについて説明。生成AIの登場でデータセンター向けのインターコネクト製品の需要が年率2倍で伸びていることに加え、欧米で本格採用が進む車載イーサネットを日本の自動車メーカーが採用検討していることを明らかにした。
車載イーサネットで先行する欧米、日本市場での採用も広がるか
日本市場において今後の大きな成長を期待しているのが車載イーサネット製品である。マーベルジャパン カントリーマネージャー兼セールス副社長のマイク・バトリック氏は「自動運転やコネクテッドカー、SDV(ソフトウェア定義自動車)といった自動車業界を変革させるメガトレンドに共通するイネーブラーになるのが、車載システムのデータ伝送を高速に行える車載イーサネットだ」と延べる。
ただし、車載イーサネットの量産車への採用は欧米の自動車メーカーが先行しているのが実情だ。その背景にあるのが、車載コンピュータであるECU(電子制御ユニット)によって構成されるアーキテクチャ違いである。欧米の自動車メーカーは、ECUをデータセンターのように整理してネットワークにつなげる「ゾーンアーキテクチャ」の採用を広げている。「このゾーンアーキテクチャは、スケーラブルでソフトウェアとの親和性も高い」(バトリック氏)。一方、日本の自動車メーカーは、ポイントツーポイントでECUをつなげる従来型のドメインアーキテクチャにとどまっており、ゾーンアーキテクチャへの移行は進んでいない。
マーベルの調査では、欧米の自動車メーカーを中心に新車のモデルイヤーベースで2025年には約40%が、2029年には80%以上がゾーンアーキテクチャを採用するようになると想定している。バトリック氏は「このような市場動向もあり、今後は日本の自動車メーカーもゾーンアーキテクチャの採用を進めることになるだろう」と見込む。実際に、TechInsightsによる調査でも、自動車出荷台数の2023〜2030年の年平均成長率が3%であるのに対し、車載イーサネットポートの出荷数は同24%と大幅に上回ると予測されている。
また、日本の自動車メーカーのゾーンアーキテクチャ移行が遅れているという指摘はあるものの、5社がマーベルの車載イーサネット製品を採用しており、今後はこれが拡大していくことは確実だという。「欧米では2024〜2025年にかけて、高速の10Gbps車載イーサネット製品が量産車の中枢部に採用されるだろう。日本は欧米に比べて2世代ほど遅れており、2026年に1Gbps車載イーサネット製品の搭載が始まると見ている」(マーベルジャパン 自動車セールス&マーケティング ディレクターの遠藤千里氏)。
これらの他、日本市場ではNTTが提唱する光ベースの次世代ネットワーク基盤構想「IOWN」などを中心に電子光学ICに対する技術的なニーズが高まっている。バトリック氏は「マーベルもそういった動向は意識しており、顧客とのPoC(概念実証)なども行っている。米国本社のR&D部門とも協調しながらキャッチアップしていきたい」と述べている。
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Marvell Semiconductorはエンタープライズ向けなどで培ってきたイーサネットの実績を生かし、車載向けでも存在感を高めようとしている。ドイツに車載イーサネットの開発拠点を設けた他、日系自動車メーカーに向けても積極的に働きかけていく。