車載イーサネットで自動運転からミラーレス車まで貢献、マーベルの事業方針:車載半導体
Marvell Semiconductorはエンタープライズ向けなどで培ってきたイーサネットの実績を生かし、車載向けでも存在感を高めようとしている。ドイツに車載イーサネットの開発拠点を設けた他、日系自動車メーカーに向けても積極的に働きかけていく。
マーベルジャパンは2016年6月22日、東京都内で会見を開き、同社が注力する車載イーサネットに関する説明会を実施した。
Marvell Semiconductorはエンタープライズ向けなどで培ってきたイーサネットの実績を生かし、車載向けでも存在感を高めようとしている。2015年に「世界初」(同社)となる伝送速度が1Gビット/秒(Gbps)の車載イーサネット対応のトランシーバICを発表し、サンプル出荷を始めている。
伝送速度1Gbpsの車載イーサネットは2016年7月にも規格として正式に承認を受ける見通しだ。規格化に先駆けてサンプル出荷を始めたのは、新技術として早い段階で評価してもらう狙いがあるという。
2016年4月にはドイツ・エットリンゲンに車載イーサネットの研究拠点を開設し、開発体制を強化した。「ドイツの自動車メーカーは車載イーサネットの導入で先行している。日本の自動車メーカーも興味を示しており、次世代の車載情報機器や自動運転システムで導入が進んでいくのではないか」(Marvell Semiconductors オートモーティブ・ソリューショングループ ディレクターのアレックス・タン氏)。
マーベルの車載イーサネット製品群
同社はエンタープライズ向けなどでのノウハウを応用して車載専用に伝送速度1Gbpsの車載イーサネット開発プラットフォームをラインアップに加えた。TE Connectivityの車載用コネクタと連携する。
この他にも、伝送速度100Mbpsの車載イーサネットの開発プラットフォームや、既存技術に対応している。トランシーバICやスイッチ、SoCなど、車両に搭載する上で必要な部品も取りそろえている。
自動車でイーサネットを重要視するのは「ローエンドからハイエンドのモデルまでカバーできるとともに、モデル切り替え時の設計変更にも柔軟に対応可能な共通のアーキテクチャを採用できるメリットがあるからだ。また、ハーネスは低コストで軽量化にも対応している。さらにイーサネットは、PCや各種通信機器などで長い実績のある枯れた技術なので従来のツールを活用して容易に搭載できる強みもある」(タン氏)。
車載イーサネットはデータ通信量の多い部分から
車載イーサネットが搭載されるのは「データ通信量の多いところからになる。例えば、映像やオーディオに加えて、LTEなど車外とのコネクティビティにも使われる。伝送速度100Mbpsの車載イーサネットは既に採用している自動車メーカーもある」(同氏)という。
同社は、消費電力の低さや車載用としての堅牢性、伝送速度100Mbpsから1Gbpsに置き換え可能な互換性のあるソリューションをそろえている点を自動車メーカーに訴求していく。
伝送速度は車載情報機器の進化や自動運転車のコスト低減で重要な役割を果たすという。「ギガビット帯域を活用することで、複数の4Kの映像や非圧縮の画像の転送が可能になる。今日現在存在している技術を採用するだけで実現できるのが特徴だ。また、自動運転車のコストを下げるポイントは通信速度を100Mbps以上に引き上げることだ」と同氏は説明した。
さらに、ミラーをカメラで置き換えるミラーレス車でも貢献できるという。「車載イーサネットなら高い解像度を確保できる。全てのミラーがカメラに置き変わらなくても、ミラーとカメラの併用は増えてくる。複数のカメラの映像を扱うのはイーサネットの得意分野だ」(同氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車載イーサネットのトランシーバが伝送速度1Gbpsに、1000BASE-T1に準拠
Marvell Technology Group(マーベル)は、伝送速度が1Gbpsの車載イーサネットに対応するトランシーバIC「88Q2112」を発表。従来の伝送速度100Mbpsの車載イーサネットは、車載カメラの映像伝送にエンコード/デコードが必要だったが、伝送速度が1Gbpsあれば不要になるという。 - サイドミラーなしのクルマが解禁、鏡がカメラに置き換わるとどうなる?
2016年6月から日本国内で“ミラーレス車”の公道走行が解禁になる。車両外部に装着したカメラで後方/後側方の間接視界を確保する代わりに、サイドミラーをなくすことが認められる。カメラに置き換われば、空気抵抗の低減やミラー分の軽量化を図ることができる。夜間の視認性向上や、運転支援など安全面の進化も見込まれる。 - 車載イーサネット導入の起爆剤になるか、フリースケールがマイコンにPHYを内蔵
Freescale Semiconductor(フリースケール)とBroadcom(ブロードコム)は、自動車の駐停車時や低速走行時に車両の周囲を確認するのに用いるサラウンドビューシステム向けに、車載イーサネット対応の物理層IC(PHY)を内蔵する車載マイコン「MPC5606E」を共同開発した。 - Linuxとイーサネットが鍵を握る車載情報機器の進化
2013年5月28〜29日に東京都内で開催された、「Automotive Linux Summit Spring 2013」(主催:The Linux Foundation)。同イベントでは、車載情報機器への採用が広がりつつあるLinuxや、それと関連する開発プロジェクトの最新情報が紹介された。本稿では、ジャガーランドローバーとルネサス エレクトロニクスによる2日目の基調講演をリポートしよう。