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3D CADベンダーが推進するクラウド対応で設計開発環境はどう変わる?3D設計の未来(4)(1/2 ページ)

機械設計に携わるようになってから30年超、3D CADとの付き合いも20年以上になる筆者が、毎回さまざまな切り口で「3D設計の未来」に関する話題をコラム形式で発信する。第4回は、3D CADベンダー各社が推進するクラウド対応、プラットフォーム戦略によって設計開発環境はどう変わるのかを整理する。

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 クラウドを利用した3D CADの運用について耳にすることが多くなりました。筆者自身もクラウドおよびクラウド上でのプラットフォーム活用に強い関心があったことから、現在クラウド接続環境を導入するに至っています。

 クラウドを利用した3D CAD、クラウドプラットフォームと聞いて、その仕組を十分に理解している人はどれくらいいるでしょうか。筆者もその“分かりにくさ”を実感した一人です。また、設計開発環境のクラウド化に否定的な意見があるのも事実です。そんなわけで、今回は設計開発環境のクラウド化をテーマに、筆者の考えを述べたいと思います。

3D CADベンダー各社によるクラウド対応

 現在、多くの3D CADベンダーが自社ツールのクラウド/SaaS(Software as a Service)対応を推進しています。その一例を以下に列挙します。

 これらツールの詳細を調べてみると、「フルクラウド」や「クラウドベースのライセンス」「データ保管をクラウド化」といった言葉が出てきます。いずれも同じような意味にも取れますし、ちょっと違うようにも感じます……。分かりにくいですね。そこで、本稿では筆者が普段使用しているSOLIDWORKSを例に、設計開発環境のクラウド化とはどんなものかを解説していきたいと思います。

SOLIDWORKSのクラウドプラットフォーム戦略

 SOLIDWORKSは、1995年に販売を開始してから現在に至るまで、“デスクトップ版”と呼ばれるPCにインストールしてスタンドアロンで使用するSOLIDWORKSを提供してきましたが、近年その製品ポートフォリオが大きく拡大しています。この動きを後押ししているのが、Dassault Systemes(ダッソー・システムズ)のクラウド基盤「3DEXPERIENCEプラットフォーム」との融合です。ダッソー・システムズでは3DEXPERIENCEプラットフォームを、SOLIDWORKSを含む同社製品ブランドの共通基盤として活用し、データやツール、プロセス連携によるコラボレーションの促進を強化しています。

 以下に、SOLIDWORKSの製品群についてまとめてみました。

SOLIDWORKS スタンドアロンライセンス(デスクトップ版)

 Windows OSを搭載したPCに直接インストールして利用できるSOLIDWORKSで、ネットワークや他の機器に接続していなくても単独(スタンドアロン)で利用できます。“デスクトップ版”と表現されるSOLIDWORKSがこれに該当します。

SOLIDWORKS ネットワークライセンス(SNL版)

 ライセンスがネットワーク上のライセンスサーバにあるタイプのSOLIDWORKSです。各作業PC(クライアント端末)からライセンスサーバにアクセスしてライセンスを取得することでSOLIDWORKSを利用できます。SOLIDWORKSのアプリケーションそのものは、各PCにインストールしておく必要があります。

3DEXPERIENCE SOLIDWORKS(コネクテッド版)

 クラウド上の3DEXPERIENCEプラットフォームへの接続を前提としたSOLIDWORKSです。ダッソー・システムズの豊富なアプリケーションや機能群を活用したり、シームレスなデータ連携を行ったりなど、SOLIDWORKSの機能を拡張できる点が大きな特長となります。こちらもアプリケーションそのものはクラウドではなく、各作業PCにインストールしておく必要があります。後述するフルクラウド版のように、インストール不要なWebブラウザベースの3D CAD環境とは異なります。

SOLIDWORKS Cloud(フルクラウド版)

 こちらもクラウド上の3DEXPERIENCEプラットフォームとの接続が前提となる設計開発/コラボレーション環境となります。Webブラウザベースの「xApps」と呼ばれる各種設計開発向けのアプリケーションを利用できる次世代の設計環境として位置付けられています。各作業PCにアプリケーションをインストールする必要がないため、ハイスペックなPCでなくても利用できます。ちなみにxAppsはロール単位で提供されており、例えばパラメトリック設計環境を提供する「3D Creator」というロールには「xDesign」と呼ばれるアプリケーションなどが含まれます。

従来の一般的な設計開発環境

 SOLIDWORKSの製品群について簡単に紹介しましたが、「クラウド」と一言でいっても、設計開発環境としての特色がそれぞれ異なることが分かります。

 次に、設計開発環境のクラウド化によって、どのように3D CAD運用が変わってくるのかを確認していきましょう。まずは、従来の一般的な設計開発環境での運用イメージをおさらいしてみます(図1)。

従来の一般的な設計開発環境のイメージ
図1 従来の一般的な設計開発環境のイメージ[クリックで拡大]

 図1の環境下では、3D CADアプリケーションは個々のPCにインストールされています。そのため、CPUやグラフィックス、メモリなどのコンピュータリソースが潤沢なハイスペックPC(ワークステーションなど)が必要となります。

 SOLIDWORKSによる3D CAD運用では、選択肢としてスタンドアロンのデスクトップ版と、ネットワークライセンスサーバからライセンスを取得して使用するSNL版があり、このどちらか、あるいは両方を使用した環境での運用が基本となります。

 近年リモートワークが普及していますが、社員が自宅などの社外から、社内にあるCADデータ管理用サーバやネットワークライセンスサーバにアクセスする場合には、VPN(Virtual Private Network)が用いられます。他にも、リモートデスクトップ接続によって社外のコンピュータから社内のコンピュータにアクセスし、アプリケーションやデータを操作する方法もあります。

 ちなみに、社外からのアクセスに関しては、許可された特定の社員だけが利用できるケースがほとんどで、協力会社の担当者など社外の人間は基本的に外部からアクセスできません。

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