「工場運営分析」が製造業の省エネとスマート化の基礎になる:現場改善を定量化する分析手法とは(5)(4/4 ページ)
工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第5回からは前後編の2回に分けて工場運営分析について説明する。前編の第5回は「エネルギー分析」と「生産形態分析」を取り上げる。
2.4 移動方式からの区分
(1)物進式
製品が工程を作業順に移動しながら製造していきます。工程や部品の同期化、生産リードタイムの短縮などが課題となります。物進式の生産システムは、各工程の作業時間がおおむね同じという状態にしておかなければロス時間が多くなる傾向にあります。このようなラインバランスをおこなう場合は、作業単位ではなく部品1個単位できめ細かく各工程の作業負荷を決めていくことが重要です。
(2)人進式
作業者が製品に作業順に働きかける(製品は移動しない)生産方式がおこなわれます。課題としては、多能工化、ST(標準時間;Standard Time)の低減、同時作業人員の削減などが挙げられます。
例えば、物進式では、生産量が減少して作業量が半分になったとしても、作業者がそれぞれ特定の作業しかできないとすれば、作業量が減ってもそれに合わせて作業者を減らすことができないので原価低減にはつながりません。しかし、人進式では、作業者が全行程の作業ができることが前提ですので、作業量に合わせた人員削減が可能となるメリットがあります。
また、ライン内の仕掛かり品の量が一定に保たれることや作業者の作業区域の変更が容易であることなどのメリットがあります。広義の意味ではジャストインタイム(JIT:Just in Time)生産方式も人進式の生産方式といえます。
2.5 生産形態別の管理ポイント
生産形態には、それぞれ特徴がありますので、その特徴にあった管理を行う必要があります。一般的に多く見受けられる生産形態について、その管理ポイントを次の表3に記述しました。
区分 | 生産形態 | 管理ポイント |
---|---|---|
販売形態 | 受注生産 (個別生産) |
・材料や部品、加工機能を標準化と共有化をおこなって生産の効率化を図ります ・日常の進度管理を十分に行い、部品の共通化で製品納期を短縮します ・必要の都度に造るので製品在庫は少なく、作業は効率的ですが、品種の切り替えによる段取り作業が多いので、稼働率低下などに配慮しなければなりません |
仕込み生産 (見込み生産) |
・市場の要求を的確に把握して製品を企画し、市場に適応させます ・新製品の開発など、競合他社とは異なる製品の差別化を継続的に行っていきます |
|
生産数量 | 量産 | ・部品の共通化により、どの製品にも手直しを加えることなく、組み立てられるよう互換性を高めます ・製品の品種切り替え、生産量の増減がある場合、工程のバランスに注意を払う必要があります ・段取り替えや管理の手間は省けますが、在庫が増えないように注意しておく必要があります ・品種切り替え時の工程能力の調整に配慮が必要です |
中量産 | ・段取り替え作業の頻度と、在庫数量の経済的バランスを検討し、適切なロットサイズを決める必要があります ・生産する製品のロットの大きさにあわせた資材の供給方式の確立が必要です |
|
非量産 | ・部品形状や加工内容をグループ・テクノロジー(GT:Group Technology)で共通化して、グループ単位で製造することで設備の効率化を図ります ・品種間での段取り替えを少なくし、加工順序などの編成を工夫して、生産のフレキシビリティを高めます |
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表3 生産形態別の管理ポイント |
◇ ◇ ◇ ◇
電力価格の上昇が利益を圧迫していることもあり、電力消費量の削減=省エネが大きな課題となっています。省エネ指向のアプローチは、消費エネルギーの削減はもちろん、原価低減にも大いに関わってきますので、従来の作業改善に加えてアプローチの領域が広がってきたといえます。
各種のエネルギー消費量を計測するツールは、多くのメーカーから販売されていますが、その計測結果からさらに作業域まで踏み込んで、何を(What)どのように(How)行い原価低減につなげていくかがより重要になってきました。
また、生産形態の分析は2項で前述した通りですが、実際の生産活動においては、全ての管理すべき項目が表3に示したように、生産形態が明確に分かれるといったものではなく、市場や顧客の要求する仕様や企業側の生産方針、需要の状態によって生産方式が変化していくものです。その際、企業は工場内のそれぞれの工程ごとに管理すべき項目の特徴をよく理解してそれに応じた管理をしていかなければなりません。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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