吸音材と遮音材を使ったら騒音を何デシベル低減できる?:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(19)(5/5 ページ)
“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第19回では、吸音材と遮音材を使ったら騒音を何デシベル低減できるのかを計算してみる。
遮音材と吸音材を組み合わせたときの音圧レベルの計算[屋外]
屋外の場合を求めてみましょう。図7に条件を示します。
屋外の部屋定数R2ですが、無限空間に音を放射しても反射波はないのでα2=1[-]、R2→∞[m2]となります。また、音源の出力のデシベル表示PWLの定義は次式でした。
受音点Pの音圧レベルは次式となります。
ρc=415[kg/m2s]なので、式27の第5項は0.016[dB]となり、0[dB]としましょう。上式に式29を代入します。
式31は建築関係でよく使われる式です。
では、1つ目の方法である式16を使った場合はどうなるでしょうか。
第5項が残りました。α1=0.76[-]とすると、第5項がゼロとなり式28と一致します。実は式31の導出ができなくて、式32から式31に至るまでに2年ほどの時間を要しました。
シミュレーションで確認
箱の1辺の長さが4[m]、等価損失が20[dB]、箱内側の吸音材の吸音率が0.8[-]の場合を音響シミュレーションソフトで解析しました。このソフトは、波動方程式を愚直に解くタイプです。計算結果を図8に示します。シミュレーションは62.5〜4000[Hz]の帯域で行い、それぞれの周波数成分のオーバーオール値を求めています。条件がそろうと音響シミュレーションでも厳密解に近い値が出力されます。
次回は、音響シミュレーションの例をいくつか紹介します。お楽しみに! (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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