シャーレス氏が28年務めたダッソーCEOを退任、自身の今後や後継者への期待を語る:メカ設計ニュース
2023年末をもってCEO職を退任するDassault Systemes(ダッソー・システムズ)のベルナール・シャーレス氏が自身の今後の役割や後継者、新しいエグゼクティブチームへの思いを述べた。
1995年から28年間にわたり、Dassault Systemes(ダッソー・システムズ)のCEO(最高経営責任者)を務めてきたベルナール・シャーレス氏が2023年末をもってCEO職を退任する。2024年1月から、現在Deputy CEO(副最高経営責任者) 兼 COO(最高執行責任者)を務めるパスカル・ダロズ氏がCEOを引き継ぐ。取締役会会長は引き続きシャーレス氏が務め、新経営陣を陰ながら支援していくという。
2023年末をもってCEO職を退任するDassault Systemes CEO、取締役会会長のベルナール・シャーレス氏。「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2023」への登壇を機に来日し、日本のメディア向けに記者説明会を開催した
2023年11月7日に開催された「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2023」(主催:ダッソー・システムズ)への登壇を機に来日したシャーレス氏は、同日午前中に行われた記者説明会の場で次のようにコメントした。
「私の後任者であるパスカル・ダロズは、約20年間ともに仕事をしてきた仲だ。今後、私は自分自身のパッションの対象である『Science(科学)』『Research(研究)』、そして『Strategy(戦略)』に取り組んでいきたいと考えている。バックステージでこれらのテーマに携わりながら、新しいエグゼクティブチームが、私がなし得てきたよりもさらに素晴らしい成功を遂げられるよう陰ながらサポートしていきたい」(シャーレス氏)
シャーレス氏は40年前の1983年にダッソー・システムズに入社。1995年に社長 兼 CEOに就任して以来、28年間にわたりリーダーシップを発揮してきた。その間、デジタルモックアップ(DMU)、PLM(製品ライフサイクル管理)、「3DEXPERIENCEプラットフォーム」「バーチャルツイン・エクスペリエンス」といったコンセプト/ソリューションを生み出し、同社の成長をけん引。2020年には戦略的方向性として「From Things to Life(モノからヒト、生命へ)」を掲げ、製造業、都市/インフラ、ライフサイエンス&ヘルスケアの3つの領域で事業を拡大してきた。
「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2023」におけるシャーレス氏の講演の様子(1)。ダッソー・システムズは製造業、都市/インフラ、ライフサイエンス&ヘルスケアの3つの領域で事業を拡大してきた[クリックで拡大]
また、シャーレス氏は12年ほど前からスタートアップ企業の支援にも注力しており、現在ではEV(電気自動車)新規参入企業の上位10社全てにおいて、ダッソー・システムズのソリューションが採用されているという。「戦略的にわれわれのソリューションをEVのスタートアップ企業に広く使ってもらい、課題解決に役立ててもらった。そこから非常に大きな学びを得ることができたと同時に、意思決定のスピードが遅いとされる伝統的な企業の理解促進にもつなげられた」(シャーレス氏)。
「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2023」におけるシャーレス氏の講演の様子(2)。ダッソー・システムズはスタートアップ企業の支援にも注力しており、現在EV新規参入企業の上位10社全てが同社ソリューションを採用しているという[クリックで拡大]
後任のダロズ氏は2020年から同社のCOOおよびオペレーションズエグゼクティブコミッティの責任者を務め、2023年にDeputy CEOに任命され、同社の戦略に関わる組織全体の変革を指揮してきた人物だ。
ダッソー・システムズは2020年に打ち出した“人体のバーチャルツイン・エクスペリエンス”に続く2040年のビジョンとして、“持続可能な世界のためのバーチャルツイン・エクスペリエンス”の実現を掲げており、経済そのものの在り方の変容、サステナビリティの実現に向けた社内外の取り組みを強化していく方針だ。
将来に向けた期待とダッソー・システムズの使命について、シャーレス氏は「今後、産業界がサステナビリティを実現するための重要課題に立ち向かっていく中で、単に昨日のことを改善するだけでは足りない。これまでとは違う方法を生み出していく必要がある。例えば、将来のエンジニアリングに向けた新しい方向性として“廃棄物をデザインする”というアイデアがある。従来のように製品をデザインするだけでなく、廃棄物までデザインする(廃棄物の再利用まで計画する)ことができれば、そこから新しい価値が生まれる可能性がある。また、地球環境から何を得て、人間に何を与えるのかといった収支のような考え方も必要になってくるのではないか。現状はまだ世の中の多くがこうした考えに至っていないが、将来に向けてわれわれがやるべきことは多くある。私の後継者、新しいエグゼクティブチームがそれらを具現化し、持続可能な社会の実現に貢献してくれると確信している」と述べる。
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