BlackBerryはQNXでSDVをつなぐ、非自動車分野の展開も強化:車載ソフトウェア(2/2 ページ)
BlackBerry Japanは、組み込みシステム向けソフトウェアプラットフォーム「BlackBerry QNX」のプライベートイベント「BlackBerry QNX/TECHForum JAPAN 2023」を東京都内で開催。QNXの事業進捗や「BlackBerry IVY」の採用状況などについて説明した。
ボッシュのIVY搭載デモカーを披露
BlackBerry QNX/TECHForum JAPAN 2023の会場では、ボッシュ(Robert Bosch)が開発したIVYを搭載するデモカーを披露した。同デモカーは、プジョーの「508」をベースとして、次世代デジタルコックピットをイメージして、デジタルメーターを含めて4つの大型ディスプレイを搭載している。このデジタルコックピットを統合制御する「Information Domain Computer」は、クアルコムの車載SoC「8195」上にQNXのハイパーバイザー上を組み込み、IVIを担うAndroidやクラウドと接続するIVY、その他のデジタルコックピットの制御システムなど構築されている。
IVYのデモとしては、Information Domain Computerによって収集するタイヤやブレーキパッドの消耗度とドライバーの運転傾向から適切な交換時期を提案する「予測型保守」と、燃料補給や充電における「安全な車両決済」の2種類を披露した。BlackBerry Vice President IVY Business Developmentのニコ・ハモンド(Niko Hammond)氏は「IVYはクラウドと連携するものの、データ処理の多くを車両側で行うので通信コストを抑えることができる。ある事例では70%もの通信コスト削減が可能になった」と語る。
また、IVYのエコシステムパートナーは40社以上で、統合済み自動車用アプリケーションは20社以上が提供するなど、エリクソン氏が指摘したエコシステム活用の利点も得やすい。デモカーを披露したボッシュに加えて、三菱電機も車載システム「FLEXConnect」へのIVYの搭載を決めている。台湾の鴻海精密工業/Foxconnが主導するMIH コンソーシアムは、EV(電気自動車)プラットフォームのソフトウェア基盤にQNXとIVYを採用している。
大手自動車メーカーや有力サプライヤーがひしめく日本国内市場でも自動車向けの展開は重視しているが、BlackBerryにとって今後大きな成長機会があるのは非自動車向けのGEMとなる。BlackBerry Japan カントリーセールスマネージャー 日本 IoTのアガルワル・サッチン氏は「自動車向けで求められる高い性能やセキュリティ、機能安全などの安全性はGEMでも強い引き合いがある。ロボットOSであるROS2への対応や、マルチプロセッシングが可能なQNX SDP8.0により、GEMへのさらなる浸透が可能になる。さらに、自動車向けで先行して展開してきたIVYのコンセプトはGEMでも興味を集めている。産業分野別にエコシステムを整備するなどして、IVYの横展開も図っていきたい」と述べている。
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