ブラックベリーは世界No.1の車載ソフトサプライヤーに、「VW.OS」も採用:車載ソフトウェア
ブラックベリー(BlackBerry)は、同社のIoT(モノのインターネット)ビジネス事業の中核を成す組み込みソフトウェアソリューション「BlackBerry QNX」と、大手クラウドベンダーAWSと共同開発したインテリジェント車載データプラットフォーム「BlackBerry IVY」など、自動車分野における最新状況について説明した。
ブラックベリー(BlackBerry)は2022年8月26日、オンラインで会見を開き、同社のIoT(モノのインターネット)ビジネス事業の中核を成す組み込みソフトウェアソリューション「BlackBerry QNX(以下、QNX)」と、大手クラウドベンダーAWSと共同開発したインテリジェント車載データプラットフォーム「BlackBerry IVY(以下、IVY)」など、自動車分野における最新状況について説明した。
同社のシニアバイスプレジデントで先進技術部門に当たるBlackBerry Technology Solutionsのオペレーション責任者を務めるジョン・ウォール(John Wall)氏は「QNXをはじめ当社のソリューションを搭載する車両台数は2013〜2022年にかけて年平均34%で成長している」と語る。現時点での搭載車両台数は2億1500万台であり、世界トップの自動車メーカー10社の全て、ティア1サプライヤー7社の全てが採用しており「世界No.1の車載ソフトウェアサプライヤーだ」(ウォール氏)という。また、EV(電気自動車メーカー)メーカーについては世界トップの25社中24社が採用しているが、「残るは皆さんもよく知っているあの企業だけ」(同氏)とした。これは、テスラ(Tesla)のことを指しているとみられる。
今回の会見に合わせてQNXの採用事例を2つ紹介した。1つは、フォルクスワーゲン(Volkswagen)グループのソフトウェア子会社であるキャリアド(CARIAD)である。フォルクスワーゲングループが推進するNEW AUTO戦略では、ソフトウェアプラットフォーム「VW.OS」とクラウド「VW.AC」、高拡張性・統合型のエンドツーエンドな電子アーキテクチャから成る統合型ソフトウェアプラットフォームが中核に位置付けられており、その開発をCARIADが担当している。ブラックベリーがライセンス供与する「QNX OS for Safety 2.2」などが、VW.OSのADAS(先進運転支援システム)や自動運転機能向けのスタックに統合されるという。
もう1つの採用事例は、中国のPATEOが開発するインテリジェントコックピット「PATEO CONNECT+」である。PATEO CONNECT+は、東風汽車の高級車ブランド「VOYAH」やEVメーカーのHozon New Energy(NETA:合衆新能源汽車)など、中国の自動車メーカー5社/10モデルへの搭載に向けて量産を開始している。
IVYについては、2020年12月の開発発表から順調にエコシステムを拡大しており、2023年のデザインウィン、2024年以降の収益化を想定する5カ年の収益計画を上回るペースで推移しているという。ブラックベリーのシニアバイスプレジデントでIVY Platform Developmentを担当するサラ・タティス(Sarah Tatsis)氏は「自動車やスマートシティー分野で機械学習を活用したアプリケーションを展開する上で、ハードウェア、ソフトウェア、クラウドそれぞれに対して中立なのがIVYだ。既に複数の自動車メーカーとPoC(概念実証)も始めている」と説明する。
なお、先述のPATEOはデジタルコックピットにIVYを統合する方針で合意しており、PATEO CONNECT+の展開はそのマイルストーンになるものだ。
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