ソフトウェア定義自動車の標準化へ、Armが支えるSOAFEEの活動が本格化:組み込み開発 インタビュー(3/3 ページ)
ArmプロセッサをベースにSDV(ソフトウェア定義自動車)の標準化を進めるSOAFEEが、2021年9月の立ち上げから2年を迎えた。SOAFEEの活動を支援するArmのオートモーティブ事業部門の担当者に、現在の活動状況について聞いた。
スマートフォンで15年かかったところをSDVの標準化は5年が目標
SOAFEEは、Armベースのハードウェアを前提になっており、Armが活動を支援しているが「決してArmが主導しているわけではない。先述した通り、コミュニティーや自動車業界が自ら問題を解決するための環境を構築している」(ローディック氏)という。
SDVの実現に向けた取り組みは、自動車メーカーやメガサプライヤーなどが進めているが、現状では複数の規格が乱立している状態にある。この状況が続けば、SDVに関わる全てのサプライヤーがそれぞれの規格に対応しなければならなくなり、そのことが自動車技術の進化を阻害しかねない。サプライヤーからハードウェアやソフトウェアを調達する自動車メーカーも、コロナ禍のような品不足があったときには、自身の規格によってサプライヤー変更を柔軟に行えず自縄自縛に陥る可能性もある。
ローディック氏は「草創期のスマートフォンも同じ状況にあった。SOAFEEとしては中立の立場から、今ある技術を互いにつなげていくための標準化を進めていく。決して新しい技術を作る組織ではない。スマートフォンは今の成熟した状況になるまで15年かかったが、SOAFEEが対象とするSDVについては5年で成し遂げたいという思いがある。ただし、Armが主導するのではなく、業界全体で進めてもらうにはやはりある程度の時間がかかるため、簡単にはいかないことも承知している」と述べる。
車載ソフトウェアに関連する標準化活動は、SOAFEEだけが行っているわけではない。制御系ソフトウェアの標準化を進めてきたAUTOSARをはじめ、クラウドネイティブとの関わりが深いLinux Foundationや、自動運転車のコンソーシアムであるAVCC(Autonomous Vehicle Computing Consortium)などさまざまな組織と連携している。「自動運転の恒星系をイメージして密に情報交換している。囲い込みをしないことを重視するSOAFEEとして他組織との連携は重要だと考えている」(デイ氏)。
SOAFEEのロードマップでは、SOAFEE Blueprintの標準化活動をより具体化するための「Regional Integration Labs」を各地域で立ち上げることを計画している。その第1弾の候補となっているのが日本だ。デイ氏は「現在立ち上げに向けた議論が進んでおり、早ければ2023年内にもできるのではないかと期待している。Autowareを中核としたSOAFEE Blueprintが活動の中心になるのではないか」と意気込む。
現時点でSOAFEEに自動車メーカーは参加していないが、先述した通り参加を表明していない企業の中には自動車メーカーが入っている。ローディック氏は「他の自動車メーカーも現在参加を検討しており、この3年目からは自動車業界内でより広く活動を訴求していけるだろう」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ソフトウェアファーストでオープンな開発環境にArmが名乗り、「SOAFEE」発表
Armは2021年9月16日、オンラインで説明会を開き、クラウドベースでの車載ソフトウェアの開発を推進するオープンなアーキテクチャ「Scalable Open Architecture for Embedded Edge(SOAFEE、ソフィー)」を発表した。 - 自動運転で広がる非競争領域、足並みを速やかにそろえられるか
自動車業界の大手企業が自前主義を捨てることを宣言するのは、もう珍しくなくなった。ただ、協調すること自体は目的ではなく手段にすぎない。目的は、安全で信頼性の高い自動運転車を速やかに製品化し、普及させることだ。協調路線で動き始めた自動車業界を俯瞰する。 - 組み込み機器の進化の鍵は「クラウドネイティブ」にあり
組み込み機器のエンジニアからは“対岸の火事”に見えていた「クラウドネイティブ」だが、自動車や産業機器の分野で積極的な取り込みが図られるなどその影響は無視できなくなっている。 - 組み込みエンジニアも知っておきたい「クラウドネイティブ」とは
IoT/クラウドロボティクス時代のシステム開発を加速化する仮想環境の活用について解説する本連載。第3回は、IT分野で浸透してきている「クラウドネイティブ」という考え方とその狙い、支える技術などについて紹介した上で、組み込み分野におけるクラウドネイティブの可能性について説明する。 - Arm日本法人の横山新社長が会見、車載など4分野に加え半導体教育のIP活用に重点
Armの日本法人であるアームの代表取締役社長に就任した横山崇幸氏が国内市場における事業方針について説明。車載など4分野に注力する他、大学などにおける半導体関連人材の教育/育成でArmのIP活用を広げていく方針を示した。 - Armで最も勢いのあるインフラ向け事業、AWSやAzureなどクラウドでの採用が急拡大
アームがサーバ向けプロセッサ「Neoverse」を中核とするインフラ向け事業の戦略を説明。クラウドやデータセンター、5Gなどの無線通信インフラ、ネットワーク/エッジ機器、スーパーコンピュータなどHPCの4分野で着実に採用を広げており、特にAWSやマイクロソフトの「Azure」といったパブリッククラウドへの浸透で手応えを得ているという。