「ビジネスで使えるAI」を簡単に、IBMが「watsonx」の国内展開を本格的に開始:製造ITニュース
日本IBMは、同社が展開するAI/データプラットフォーム「watsonx」の展開について発表。独自のAI基盤モデルの日本語版を2023年12月からリリースを開始することを明らかにした。
日本IBMは2023年9月20日、同社が展開するAI(人工知能)/データプラットフォーム「watsonx」の展開について発表。独自のAI基盤モデルの日本語版を同年12月からリリースを開始することを明らかにした。
日本IBMは2023年5月にAI/データプラットフォームとしてwatsonxを発表した。従来のAI活用では、用途に応じて学習用データを集めてAIモデルを作成するため、実際に使えるようになるために多くの時間が必要だった。しかし、watsonxではAI学習用にデータを蓄積した基盤モデルをあらかじめ作成し、AIを活用したい場合にその基盤を活用しすぐに必要なAIモデルを作成できることが特徴だ。
watsonxは、AIモデルのトレーニングや検証、チューニング、導入を進めるスタジオのような位置付けの「watsonx.ai」、さまざまなデータを管理しAI活用できる形に加工を行う「watsonx.data」、AIモデルやデータのライフサイクル管理を行う「watsonx.governance」の3つのツール群で構成されている。
AIモデル構築のアプローチには「構築済みのAIサービスを製品に組み込む」「構築済みのAIサービスを利用する」「基盤モデルを利用して独自のAIサービスを作る」「基盤モデルからスクラッチでAIサービスを作る」など4つのパターンがある。watsonxでは、これらのどのパターンでも活用できる他、AIガバナンスを確保し資産を追跡、保護する機能なども加えることができるため、幅広い業務でさまざまな形でAIを活用できる。
日本IBM 常務執行役員 テクノロジー事業本部長の村田将輝氏は「IBMは企業が競争力を強化するために活用する領域が強みで、その中でAIを幅広く容易に活用できるようにしていく。AI活用を広げるためには『オープン』『信頼』『明確な対象』『力を与える』という点が重要だが、それを確保するための基盤がwatsonxだ」と述べている。
オープンという面では、watsonx.aiは他社モデルも含めたマルチな基盤モデルを選択できるようにしている。IBM独自の基盤モデルとして「Slate」「Granite」「Sandstone」の3つを用意している他、Metaが提供するLlama 2などを使うことも可能だ。watsonx.aiは2023年12月に先行リリースを行い2024年1〜3月に製品提供を開始する予定。また、IBM独自の大規模言語モデルであるGraniteは2023年9月中に提供を開始する計画である。
信頼という面では、IBMの自社基盤モデルにおける信頼性確保策に加え、データとAIのガバナンス両方を包含するツールキットであるwatsonx.governanceを用意。2023年後半の提供開始に先立ち、技術プレビューの提供なども予定する。
また「ビジネスに役立つAI」を目指しているため、提案活動においては、業務対象を明確にし、当面は人事管理業務、顧客応対、システム更改とモダナイゼーション、IT運用の自動化などをターゲットとして取り組む。さらに、watsonx.aiの無償評価プログラムを用いた共創などを展開し、より短期間でビジネス成果を生み出せるようにする。
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