DXを妨げる「ノウハウ/ヒト/カネ」不足、組織横断のデータ共有が進まぬ製造業:ものづくり白書2023を読み解く(3)(5/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2023年版ものづくり白書」が2023年6月に公開された。本連載では3回にわたって「2023年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。
国もリカレント教育などによりDX人材の輩出を後押し
DX人材も含めた人材育成については、文部科学省も積極的な取り組みを進めている。具体的には、数理/データサイエンス/AI教育のモデルカリキュラムや各大学などの取り組みを全国へ普及・展開させるためのコンソーシアム活動や、大学院教育におけるダブルメジャーなどを推進。産業人材育成を担う専門高校においては、最先端の職業人材を育成するため、中核となって取り組みを行う専門高校を「マイスター・ハイスクール」に指定。専門高校と産業界、地方公共団体が一体となって地域の持続的な成長をけん引する人材育成に資するよう、教育課程などの刷新を目指している(図17)。
さらにDXなど成長分野を中心としたリカレント教育を推進するため、大学などに対し、産業界や社会のニーズを満たすプログラムの開発/実施に向けた支援を実施。2021年度補正予算事業「DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」として48機関(57プログラム)を採択し、就業者/非正規雇用労働者/失業者などに対し、円滑な就職/転職を支援するため、デジタルなどの成長分野を中心に、大学/専門学校において、社会のニーズに合ったリカレントプログラムを実施した。
さらに、2022年度第2次補正予算事業「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」として、デジタル/グリーンなど成長分野に関する能力を身に付けた即戦力人材を社会に輩出するため、大学などに対し、基礎、応用、エキスパートなど多様なレベルや分野に応じて、産業界や社会のニーズを満たすプログラムの開発、実施に向けた支援を行い、社会人のキャリアアップや成長分野への労働移動を後押ししていく(図18)。
ものづくり白書2023では、現在、製造業を取り巻く環境における特に大きな変化として、「デジタル化・標準化による水平分業の進展」「サプライチェーンの見える化・ダイナミック化」を挙げている。特に後者については、SDGsの観点からもサプライチェーン全体でCO2排出量や人権保護などの情報を把握していくことも必要になる。DXが待ったなしの状況において、その取り組みを成功させるためには、人材育成と並行してビジネスモデルや企業文化などの変革に取り組むことも重要だ。
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筆者紹介
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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