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炊飯器のモデリング(その2) 〜理想的な炊飯器のモデリングを行う〜1Dモデリングの勘所(23)(4/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第23回は各種炊飯器の分析と炊く方法(レシピ)を調査し、鍋材料が重要な役割を担っていることを確認する。その上で、うまく材料を選択することで、入力制御なしに“お米をおいしく炊く経験的方法”を実現する理想的なアプローチがあることを示す。最後に、この理想的な炊飯器をモデリングし、解析して炊飯性能を確認する。

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理想的な炊飯器の解析例

 図6のモデルについて、図7の諸元を基に解析する。入熱は350W、加熱時間は20分でその後は蒸らしとなる。お米と水の熱容量の定義方法であるが、水は100℃で沸騰するのでその前後で比熱が変化するとともに、100℃での蒸発潜熱を定義する必要がある。そこで、蒸発という現象が99〜101℃で発生する(100℃±a℃で、aはいくつでもいいがここでは1とした)と仮定し、蒸発潜熱/2℃(101℃−99℃)を蒸発比熱と定義して、図7左下のように定義した(参考文献[6])。

解析に使用した諸元
図7 解析に使用した諸元[クリックで拡大]

 図7を「Modelica」でテキスト表現すると下記となる(リスト1)。

model riceCooker	
 Real T1 (start=20);
 Real T2 (start=20);
 Real T3 (start=20);
 Real T4 (start=20);
 Real Q1;
 Real Q2;
 Real Q3;
 Real Q4;
 Real Q1c;
 Real Q2c;
 Real Q3c;
 Real Q4c;
 Real Qin;
 Real C2;
 parameter Real G1=2.65;
 parameter Real G2=100;
 parameter Real G3=100;
 parameter Real G4=1.1;
 parameter Real C1=321;
 parameter Real C3=1.07;
 parameter Real C4=482;
 parameter Real Tr=20;
 parameter Real tcut=1200;
 parameter Real Q0=350;
equation
 Qin=Q1c+Q1;
 Q1=Q2c+Q2;
 Q2=Q3c+Q3;
 Q3=Q4c+Q4;
 Q1=G1*(T1-T2);
 Q2=G2*(T2-T3);
 Q3=G3*(T3-T4);
 Q4=G4*(T4-Tr);
 Qin=if(time<tcut) then Q0
 elseif(time>=tcut) then 0
 else 0;
 C2=if(T2<99) then 1693
 elseif(T2>=99 and T2<101) then 377771
 elseif(T2>=101) then 990
 else 0;
 der(T1)=Q1c/C1;
 der(T2)=Q2c/C2;
 der(T3)=Q3c/C3;
 der(T4)=Q4c/C4;
end riceCooker;
リスト1 Modelicaでテキスト表現した場合

 リスト1を実行した結果を図8図9に示す。図8は各部の温度の時間変化を示す。お米の温度が最初ゆっくりと上昇し、それから一定上昇速度で上昇していることが分かる。また、加熱終了後も鍋自体がゆっくりと放熱するためにお米に十分な蒸らしを実現している。このように、土鍋炊飯は理想的な炊飯器といえる。

解析結果:各部温度[℃]の時間変化
図8 解析結果:各部温度[℃]の時間変化[クリックで拡大]

 図9は各部の熱量の時間変化で、熱が伝わっていく様子を手に取るように見ることができる。例えば、鍋に関していうと、加熱状態では熱源から熱を受けて鍋自体が熱を一定量蓄積しながら、その大半をお米に伝えていることが分かる。一方、加熱終了後は、鍋は逆に放熱してお米に蒸らし状態を与えていることが分かる。 (次回へ続く

解析結果:各部熱量[W]の時間変化
図9 解析結果:各部熱量[W]の時間変化[クリックで拡大]

参考文献:

  • [6]福江|熱回路網法による凍結プロセスの高速予測技術の検討|2015年度日本冷凍空調学会年次大会講演論文集

⇒連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール:

大富浩一(https://1dcae.jp/profile/

日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。


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