“現場の負担を削る”新工場で工作機械の作り方を進化、AGVも活用で生産性35%向上:メイドインジャパンの現場力(2/2 ページ)
工作機械メーカーの中村留精密工業は2023年8月23〜25日までプライベートショー2023「負担を削る展」を本社工場で開催し、新たに完成した第13工場のMAGIを公開した。
AGVと自動倉庫で部品を夜間搬送、売れ筋機種のユニットもストック
山村氏は「従来の工場には設備が目いっぱい入っていて、設備の更新はできても追加ができなかった。新工場ができたことで、工程の分散、再編ができるようになった」と語る。
ユニットの製作を行う新工場の2階には3台のAGV(無人搬送車)と246枚のパレットが収納可能な自動倉庫を導入した。作業者がいない夜間に、AGVが次の日のユニットの製作に必要な部品を自動倉庫から供給する他、完成したユニットを自動倉庫まで搬送するようにする。作業者は部品の補充を気にせず、より目の前の作業に集中できる。
同社ではこれまで在庫として機械を置かず、完全な受注生産だったが、今後は売れ筋の機種のユニットを自動倉庫にストックしておき、納期の短縮につなげる。
新工場の名称は社内公募を経て「MAGI」に決まった。MAGI(マギ)は新約聖書に登場する東方の三賢者とも呼ばれた人物たちで、複合加工機を通して製造現場の負担を魔法(Magic)のように削るという意味が込められている。
山村氏は新工場に関して「人とモノの動きの効率化がコンセプトであり、数値的な目標は当然達成しなければならないが、生産に携わるメンバーが『本当に負担が軽くになった』という仕組みにしなければならない」と語る。
中村留精密工業では既に紙の図面を廃止している。廃止前は組み立て時には分厚い紙の図面が必要だったが、今は作業者は手元のタブレット端末でデジタルの図面を確認する。文字も見やすく、図面の拡大が容易だ。紙の資料は50%以上減ったという。組み立て作業の開始と終了や、テストバーなどで検査した精度の数値もタブレット端末に入力して管理している。
「新工場は組み立て工場ではあるが、組み立て自体は最終工程だ。ここを成功させるためには、その前の加工や調達などは品質保証された部品を正しいタイミングで供給しなければならないし、生産管理は整流化した生産計画を展開しなければならない。生産本部全体の結果が組み立て工程に現われてくるので、メンバー全員がともに新しい工場運営を軌道に乗せ、当社も含め現場の負担を削ることにチャレンジしていく」(山村氏)
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