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ヌヴォトンの第4世代車載バッテリー監視ICはSOH推定が可能、最大25直列にも対応組み込み開発ニュース

ヌヴォトンテクノロジージャパンが第4世代目となる車載バッテリー監視ICを発表。1個のICで監視できる直列接続された電池セル数を25セルに拡大するとともに、電池パックの劣化状態を含めたSOHの推定が可能なことなどを特徴としている。

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 ヌヴォトンテクノロジージャパン(以下、ヌヴォトン)は2023年8月29日、同社として第4世代目となる車載バッテリー監視ICを発表した。1個のICで監視できる直列接続された電池セル数について、2021年11月発表の第3世代製品で業界最高水準とした20セルから25セルに拡大するとともに、電池パック全体の電流を高精度に測定できるパック監視ICとの組み合わせによって劣化状態を含めたSOH(State of Health)の推定が可能なことなどを特徴としている。バッテリー監視ICと、制御マイコンとの通信インタフェースとなる通信ICは2023年9月、パック監視ICは2024年第1四半期(1〜3月)に量産を開始する。

ヌヴォトンの第4世代車載バッテリー監視ICのラインアップ
ヌヴォトンの第4世代車載バッテリー監視ICのラインアップ。バッテリー監視ICは最大25直列対応の「KA84950UA」と同20直列対応の「KA84930UA」、パック監視ICは「KA84917UA」、通信ICは「KA84922UA」[クリックで拡大] 出所:ヌヴォトンテクノロジージャパン

 台湾のNuvoton Technologyによる買収で、2020年9月にパナソニックセミコンダクターソリューションズから社名変更したヌヴォトンだが、車載バッテリー監視ICは2010年から展開してきた製品である。同社 バッテリ・アナログソリューションビジネスグループ マーケティング部 部長の金久保圭秀氏は「バッテリー監視ICの黎明(れいめい)期から実績を積み上げており、日本国内だけでなく中国や欧米でも採用されている。自動車向けの他、産業機器向けのバッテリー監視ICも手掛けている」と語る。

ヌヴォトンの電池監視ICの歴史
ヌヴォトンの電池監視ICの歴史[クリックで拡大] 出所:ヌヴォトンテクノロジージャパン

 今回の第4世代製品の特徴は4つ。1つ目の「最大25直列の電池セルを1つのICで管理」では、一般的な乗用のEV(電気自動車)に採用されている100個の電池セルを直列で接続した400V電圧の電池モジュールに対して、必要となるバッテリー監視ICの数を4個に抑えることができる。例えば、最大12直列に対応する競合他社のバッテリー監視ICは9個のICが必要だが「ヌヴォトンの第4世代製品を使えば、配線なども含めて車載バッテリーシステムを大幅に簡素化することが可能だ」(金久保氏)という。なお、バッテリー監視ICの電圧測定精度は±1.5mV、パック監視ICの電流測定制度は±0.3%となっている。

400V電圧の電池モジュールを構成する各電池セルの監視を4個のICでカバーできる
400V電圧の電池モジュールを構成する各電池セルの監視を4個のICでカバーできる[クリックで拡大] 出所:ヌヴォトンテクノロジージャパン

 2つ目の特徴は「冗長測定システムと双方向リング通信による機能安全規格への対応」である。バッテリー監視IC、パック監視ICとも、電池セル電圧、電池パック電流を検知する回路について、基準電源やA-Dコンバーターを含めて二重化している。これによって、自動車向け機能安全規格ISO 26262の安全要求レベルで最高となるASIL Dに対応した車載バッテリーシステムの構築が可能になる。

測定システムの二重化による冗長機能でASIL Dに対応
測定システムの二重化による冗長機能でASIL Dに対応[クリックで拡大] 出所:ヌヴォトンテクノロジージャパン

 3つ目の特徴の「駐停車時に監視IC単独での異常検知が可能」では、走行時ではない駐停車時において制御マイコンをスリープにして電池セルや電池パックの状態監視をスタンドアロンで行えるため消費電力を抑えられる。監視ICが異常を検知した場合には通信ICがマイコンのスリープを解除して、異常の解消などを行えるようにする。

駐停車時の状態監視をスタンドアロンで行える
駐停車時の状態監視をスタンドアロンで行える[クリックで拡大] 出所:ヌヴォトンテクノロジージャパン

 4つ目の特徴となる「充電状態と劣化状態の推定が容易」では、バッテリー監視ICを用いた車載バッテリーシステムの状態を示す指標として一般的なSOC(State of Charge、満充電を100%としたときの充電率)だけではなく、バッテリー監視ICで測定する電圧、パック監視ICで測定する電流の組み合わせから電流インピーダンスを算出して、新品電池の容量を100%としてそこからの容量劣化の状態を示すSOHも推定できる。今回の第4世代製品は、バッテリー監視IC、パック監視IC、通信ICというチップセットでの提供により、電圧と電流の同期時間を10μs以内に短縮することで電流インピーダンスの高精度な算出が可能になり、SOHを推定できるようになった。金久保氏は「より正確にSOHを推定するには、顧客の車載バッテリーシステムの仕様との合わせ込みが必要になるだろう。当社としても製品提供だけでなくより踏み込んだ形で支援していきたい」と意気込む。

チップセットとしての利用によってSOCだけでなくSOHの推定も可能に
チップセットとしての利用によってSOCだけでなくSOHの推定も可能に[クリックで拡大] 出所:ヌヴォトンテクノロジージャパン

 車載バッテリー監視IC市場では、アナログ・デバイセズやテキサス・インスツルメンツなど海外半導体メーカーが有力だが、ヌヴォトンもこれまでの採用実績により一定のシェアを獲得している。金久保氏は「EVとPHEV(プラグインハイブリッド車)を含めた電動車の世界市場規模は2022年に1000万台を突破し、2030年には4倍の約4000万台に達するという予測もある。当社の車載バッテリー監視ICの事業規模は、この市場拡大を上回る4倍以上に成長させたい」と述べている。

 なお、ヌヴォトンは「第15回 国際二次電池展 秋」(2023年9月13〜15日、幕張メッセ)において、第4世代の車載バッテリー監視ICを出展する予定だ。

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