EVのリチウムイオン電池が燃えないために、バッテリーマネジメントにもASIL D対応:車載半導体
電気自動車(EV)の火災に関する報道が後を絶たない。駆動用バッテリーであるリチウムイオン電池が異常な発熱から発火に至る要因は、リチウムイオン電池の製造品質以外にも複数存在している。EVの火災やそのリスクに関連したリコールで名前が挙がる自動車メーカーやバッテリーサプライヤーをみて分かるように、技術が未熟で経験の浅い企業だけの問題とは限らない。
電気自動車(EV)の火災に関する報道が後を絶たない。駆動用バッテリーであるリチウムイオン電池が異常な発熱から発火に至る要因は、リチウムイオン電池そのものの製造品質以外にも複数存在している。EVの火災やそのリスクに関連したリコールで名前が挙がる自動車メーカーやバッテリーサプライヤーをみて分かるように、技術が未熟で経験の浅い企業だけの問題とは限らない。
Maxim Integrated(マキシム)のオートモーティブ製品事業部エグゼクティブディレクターを務めるTamer Kira(タマー・キラ)氏は「バッテリーマネジメントシステムに関して、自動車の機能安全規格ISO 26262で最も厳しい安全要求レベルASIL(Automotive Safety Integrity Level) Dを満たすことが必須となるのは、時間の問題だ」と指摘する。
マキシムは7〜8年前からASIL Dを満たすバッテリー監視ICを展開している。早いケースでは数年前からバッテリーマネジメントシステムにASIL D準拠を求めている自動車メーカーがいる他、次世代のEVプラットフォームの開発でサプライヤーに対してASIL D準拠を要求する自動車メーカーも複数出てきているという。
キラ氏は「あってはならないことだが、過去にリチウムイオン電池に関連したPCやスマートフォンなどの火災が多くあった。そこから得た教訓を生かして自動車の火災は絶対に避けなければならない。バッテリーに異常があるときに、乗員に対して停車してクルマから離れるよう伝える機能が必要だ。リチウムイオン電池の発火を完全に回避することはできないが、被害を最小限に抑えるためにも火災の前に確実に乗員に知らせることが求められている。そこでISO 26262のASIL Dを満たすことが助けになる」と語る。
マキシムが2021年2月に発表した駆動用バッテリーのデータ収集システム「MAX17852」はこの考えに基づいた診断機能を内蔵している。電圧や電流、温度の測定に加えて、通信も含めてASIL Dを満たす。バッテリーのリーク電流を検知し、どの程度大きな問題になりそうかを分析できる。バッテリーに問題があったときにタイミングよく修理できることは、発火を防ぎ人命を守る上でも貢献するとしている。
バッテリーマネジメントシステムは、マイルドハイブリッド(MHEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)、乗用車から商用車まで進むEV化までカバーするため、複雑さが増している。数百〜数千個のセルの電圧を正確かつ迅速に測定するだけでなく、効率的なパワーマネジメントには複数のセルの情報のタイムアライメント(時刻同期)も不可欠だという。バッテリーマネジメントシステム自体の消費電力も抑えなければならない。
マキシムのバッテリーのデータ収集システムは、セル単位やモジュール単位、バッテリーパック単位で電圧を均一にするために電圧を監視するバッテリースーパーバイザー、バッテリーシステムの両端の電圧を測定するコンタクターなどで構成されている。EVだけでなく、MHEVやPHEV、小型の電動モビリティまで広く対応する。
データ収集システムリアルタイムな温度測定にも対応し、温度の変化を基に走行距離の改善や異常の兆候の分析を行う。これらの測定エンジンは、異なるタイプのものを組み合わせて冗長化を図るという。それぞれのデバイスは1つのデイジーチェーンで接続することが可能で、数十msの誤差で同期して記録することができる。集積度を高めて小型化も図っている。
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