ロボットに正確で安全な動作を効率的に教示、パナソニックが開発:協働ロボット
パナソニックホールディングスは、接触を含む動作をロボットへ効率的に教示する技術を開発した。教示した動作を正しくこなすことと、接触時の安全性を両立する制御パラメーターを効率的に教示できる。
パナソニックホールディングスは2023年8月8日、接触を含む動作をロボットへ効率的に教示する技術を開発したと発表した。
人がロボットを直接動かして動きを教示するダイレクトティーチングは、教わった動作をロボットが再生する際に、正確に動作しながら、人やモノへの接触リスクを低減する動作が求められる。しかし、2つを両立する制御は非常に難易度が高い。
一方、ロボットの動きにバネのような柔軟性を与える制御技術「インピーダンス制御」では、バネ系のパラメーター(インピーダンスゲイン)を適切に設定すれば、教示された動作を正確にこなしながら接触リスクを低減できる。
ただし、一般的にインピーダンス制御において、安全性と動作の正確さはトレードオフの関係で設定が難しい。また、タスクの達成には、ドアノブに近づいてノブを回し、ドアを開けるといった連続する複数の動作を正確に実行しなければならないが、各動作において最適なインピーダンスゲインは異なる。
そこで同社は、二段階の手法を考案した。パラメーターを最適化しやすいように教示した一連の動作を分節化し、次に多目的ベイズ最適化により、各分節の最適なインピーダンスゲインを求める。
今回開発した分節化手法「IC-SLD(Impedance Control-aware Switching Linear Dynamics)」は、インピーダンス制御が想定するバネ系の運動方程式を複数組み合わせることで、ロボットの一連の動作が生成されたと仮定して、方程式内の未知のインピーダンスゲインと方程式の切り替え時刻を推論する問題として定義する。IC-SLDの手法では、実際に教示した軌道と予測軌道の差を最小化して解を求めるため、従来法と比較して最適化に適した分節化ができる。
次に、事前知識を活用したベイズ最適化によって、インピーダンスゲインを探索する。IC-SLDが出力したインピーダンスゲインの推定値を解候補として活用することで、効率的に最適化できる。シミュレーションと実機で評価したところ、従来法よりも短時間でインピーダンスゲインを学習できることが分かった。
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