リレーで自作したスポット溶接装置で十字配線ユニバーサル基板をカットする:注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(16)(3/3 ページ)
注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第16回は、近年広く販売されるようになった十字配線ユニバーサル基板の配線をカットするために、リレーを使って自作したスポット溶接装置を紹介する。
回路構成
図2に、今回のスポット溶接装置の回路図を示します。まず電源は、自動車用の12Vバッテリーを使います。タクトスイッチを押すとコンデンサーに充電されている電荷がコイルに流れ、共通接点がB接点とつながり、負荷に大電流が流れる仕組みです。タクトスイッチが押された瞬間、電磁コイルが作動するのですが、コンデンサーの電荷も消耗して電磁コイルは機能しなくなり、共通接点とB接点は離れます。これによってタクトスイッチが押し続けられていても負荷への電流の供給は止まります。なお、コンデンサーの容量で溶接対象物に電流を流す時間が決まります。
タクトスイッチが元に戻ると、抵抗によりコンデンサーの再充電が開始されます。抵抗の大きさで、再度電流を流してスポット溶接を行えるまでの時間が決まります。ちなみに、今回の実装では抵抗は560Ω、コンデンサーの耐圧16V容量は1000uFを使っています。
実装
図3はこの回路の実体配線図で、四角の枠で示しているのがリレーです。図4に示したリレーの裏側の写真と照らし合わせて見てください。86番と85番の端子がコイルとつながっています。コイルには極性がないのでプラスとマイナスが逆になっても問題ありません。一方、図4の30番の端子は共通接点とつながっています。30番の上側にある端子はA接点、さらにその上側にある端子はB接点ですが、A接点は今回の実装には使用していません。
図5はここまで紹介してきたスポット溶接装置の回路を、手元にあった木の板に実装したものです。アリゲータークリップの先端の銅の電極が十字ユニバーサル基板のカットすべき配線の両端のスルーホールに接触しています。リレー下部にある青色のタクトスイッチを押すと、対象部位に電流が流れ配線をカットします。リレーから後ろに伸びる黒いケーブルが自動車用バッテリーに接続されています。
スポット溶接装置の動作検証
1ページ目の最後に掲載した画像は、このスポット溶接装置を用いて十字ユニバーサル基板の切断部分に電流を流してパターンを焼き切った瞬間です。電極が接触している部分から青白い閃光が見てとれます。
図6は焼き切った箇所を検証するためのものです。赤丸で囲んだ部分が対象箇所です。拡大して見ればパターンが切断されていることが確認できます。またテスターでもチェックしましたが導通はありませんでした。
課題
このスポット溶接装置ですが、動作の検証過程で課題も見えてきました。今回の動作検証は焼き切るパターンが他から絶縁されている場合だったので、対象としたパターンのみを焼き切ることができました。しかし、他のパターンとも導通していた場合は、対象以外のパターンを焼き切ってしまう可能性があります。この課題を解決するためには、電流を流す時間を適切に調整する必要があります。このことについては、今後の課題として引き続き検討して行きたいと思います。
おわりに
筆者は今回作った装置でリチウムイオン電池のスポット溶接以外の用途にも使えることを示唆しました。逆に、他のECサイトで販売されているリチウムイオン電池のスポット溶接用のキットでも、十字配線ユニバーサル基板の配線カットにも使えるのではないかと思います。リチウムイオン電池のスポット溶接に飽きたら、このような用途にも活用されてはいかがでしょうか。
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