EVリユース電池の蓄電システムや劣化診断で関西電力と東芝系が協力:電動化
関西電力と東芝エネルギーシステムズはEVのリユース電池を使用した蓄電池システムや、EVの電池劣化診断の実証を開始する。
関西電力と東芝エネルギーシステムズは2023年8月18日、EV(電気自動車)のリユース電池を使用した蓄電システムや、EVの電池劣化診断の実証を開始すると発表した。両社は2022年11月から蓄電池事業で提携しており、その一環での取り組みとなる。
リユース電池を用いた蓄電システムの実証では、200kWhのシステムを構築するとともに、システムの利活用に関する各種サービスを検証する。実証期間は2023年度冬から数年間を予定している。場所は関西電力尼崎実験センター(兵庫県尼崎市)だ。蓄電池事業者とも協議しながら、残容量や安全性、寿命の予測などアセットマネジメントサービスや、常時遠隔監視や設備異常の検知などスマート保守支援といったサービスの2024年度中の提供を目指す。
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い発電量の変動が大きくなっており、電力の調整力の確保が課題となっている。また、電力需要の少ない時間帯での再生可能エネルギーの出力抑制でも、大容量の蓄電池を利活用するニーズが高まっている。
これを受けて、関西電力と東芝エネルギーシステムズの実証では、実設備の運用データを取得、分析し、リユース電池の特性や安全性を踏まえた事業性評価と、さまざまな充放電パターンにおける経済性評価を実施する。安心安全なメンテナンスサービスの提供に向けた検討を進める。電池の分析や評価は東芝エネルギーシステムズが行う。
電池劣化診断の参加企業を募集中
EVの電池劣化診断の実証は、関西電力、関電L&A、東芝エネルギーシステムズで行う。充電データや走行データを基に、劣化状態を定量的に把握する。EV(乗用車だけでなくバスなども含む)を運用しており、実証に参加できる企業や団体も募る。実証期間は2023年8月18日〜2024年3月31日、参加募集は2024年2月28日まで。実証場所は、関電L&Aの大阪自動車整備工場(大阪市西淀川区)となる。
参加する企業や団体が運用するEVを対象に、関電L&Aが診断に必要なデータ取得や車両点検を行う。東芝エネルギーシステムズは非破壊で電池の内部状態を推定できる充電曲線解析法に基づく劣化診断や寿命予測を実施する。関西電力は、電池のSOHや健全性、EVの効率的な利用方法に関する無償のレポートを提供する。
実証の成果を踏まえて、EVへの投資を最適化するためのアセットマネジメントサービスや、テレマティクス技術やエネルギーマネジメントの知見を生かしたEV長寿命化に寄与するコンサルティングサービスの提供を目指す。また、データの蓄積や継続した分析により劣化診断技術を向上させ、2024年度中の開発と展開を計画している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車載用から他の用途へ、リチウムイオン電池のリユースの「論点」
今回は「持続可能な開発」のために今後同様に重要となるであろう、電池の「再利用」(リユース)について解説していきたいと思います。 - EVと循環型社会の主役になるのは「オートリース会社」
ディー・エヌ・エー(DeNA) フェローの二見徹氏による講演「EV普及の鍵を握るデータ活用と流通システムの革新」の内容を紹介する。 - 車載蓄電池を定置型にリユース、でも本当に使える? 診断&最適化サービスを展開
再生可能エネルギーの利用が広がる中、需要が高まる定置型蓄電池システム向けに、リユース蓄電池の診断と最適化ソリューションを展開するのが横河ソリューションサービスだ。同社の蓄電池ソリューションへの取り組みを紹介する。 - 劣化バッテリーのコムスが急坂を余裕で登る、リチウムイオンキャパシタが貢献
ジェイテクトが、リチウムイオンキャパシタの提案に力を入れている。現在新たに打ち出しているのは、リチウムイオン電池や燃料電池とリチウムイオンキャパシタを並列接続するメリットだ。 - トヨタのEV「bZ4X」はKINTOやリースで、リユース前提にバッテリーを確実に回収
トヨタ自動車は2022年4月12日、EV(電気自動車)の「bZ4X」を5月12日に日本で発売すると発表した。個人にはサブスクリプションサービス「KINTO」で、法人にはリースで提供する。5月12日からは第1期として3000台の申し込みを受け付ける。第2期の申し込みは2022年秋を予定している。2022年度としては5000台の生産と販売を計画する。 - リチウムイオン電池のリユース/リサイクル市場、廃棄量が想定下回るが対応急務
矢野経済研究所は2022年2月15日、リチウムイオン電池のリユースとリサイクルの市場に関する調査結果を発表した。