オムロンが料理の自動化? 近未来デザインから新しいモノづくりの軸を確立:製造現場向けAI技術(2/2 ページ)
オムロンは2023年6月15日、京阪奈イノベーションセンタにおいてラウンドテーブルを開催し、同社の技術開発や具現化の方向性、研究子会社であるオムロンサイニックエックスの活動内容などに関して説明した。本稿はOSXに関する説明を中心に紹介する。
AIで人のひらめきを誘い、電池材料の開発を加速
「賢くつなぐ」で目指すのは、動的/非統制環境における人と機械の協調移動だ。大勢の人が歩く雑踏の中でも目的地に到達するロボットや、さまざまな場所で動く多数のロボットの協調制御に取り組んでいる。
例えば、目的地に向かうために人混みを避けるという制御では、人が多い場所だとロボットが遠回りを繰り返してしまい目的地になかなかたどり着けない。そこで、音や光などを発して人に避けてもらい、通路を確保すればより早く目的に近づことができる。そういった「周囲に対しての働きかけまでを学習するロボット」(牛久氏)を提案する。
オムロン 技術・知財本部長 兼 OSX 代表取締役社長の諏訪正樹氏は「これまでのロボットの進化の方向は“人間より早くて力持ちで正確に”だった。その結果、モーター駆動で位置精度を出さなければならないので大掛かりな設備になり、ぶつかったら危ないので柵で囲わないといけなくなった。これから人とロボットの共同作業は間違いなく増えてくる。われわれが考えているのは、人が当たったらロボットの方が壊れるような、人と機械が共存する世界だ。これまでの進化の方向とは異なる、新たな軸を考えようとしている」と語る。
東京大学や物質・材料研究機構などとともに、AIやロボットを活用しながら全固体電池などの材料開発を高速化させる研究にも取り組んでいる。膨大なデータから機械学習で関係性や法則を見つけ、提示することで研究者のひらめきを誘発する試みなどだ。牛久氏は「人のひらめきと労力だけが頼りのこれまでの材料開発をAIやロボットで高速化させたい」と語る。
あくまで、ひらめきの主体は人間だ。「今のAIは人間が作ってきたデータを内挿することしかできない。人間のひらめきのようなものを再現することは不可能だ。ChatGPTも自分の意志で答えているわけではなく、“これまで人間はこういう風に答えた確率が高い”というものを提示しているにすぎない。まったく別の新しい視点や一見すると非合理な発想の飛躍などはまだ人間の得意な分野だ」(牛久氏)。
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