半導体生産で重要なネオンなどレアガスの国内生産強化、大陽日酸が製造設備を新設:工場ニュース
大陽日酸と日本製鉄は、共同出資で設立した君津サンソセンターに省エネルギー型最新鋭空気分離装置1基を新設することを発表した。併せて、大陽日酸では、現在は需要の大半を輸入に頼っているレアガス(ネオン、クリプトン、キセノン)の製造装置も設置し国内生産を増強する。
大陽日酸と日本製鉄は2023年8月4日、共同出資で設立した君津サンソセンターに省エネルギー型最新鋭空気分離装置1基を新設することを発表した。併せて、大陽日酸では、現在は需要の大半を輸入に頼っているレアガス(ネオン、クリプトン、キセノン)の製造装置も設置し国内生産を増強する。
君津サンソセンター(千葉県君津市)は日本製鉄 東日本製鉄所構内における産業ガスの生産効率化を目的に2022年9月に設立されたが、今回新設する最新鋭空気分離装置は同東日本製鉄所への酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスの安定供給と大陽日酸への高品質製品供給を担う。空気分離装置の生産能力は、酸素ガスが6万Nm3/h、窒素ガスが12万Nm3/h、液化アルゴンが2100Nm3/hで、2025年6月末を稼働予定としている。
また、大型空気分離装置において酸素、窒素、アルゴン製造時の副産物として採取できるネオン、クリプトン、キセノンなどのレアガスを生かすために、大陽日酸において、これらのレアガスの精製装置および製造装置を設置する。具体的には、生産能力が年産270万リットルのネオン精製装置を2026年3月に稼働させる他、クリプトンで年産100万リットル、キセノンで12万5000リットルのクリプトン/キセノン製造装置を2025年8月に稼働させる。
ネオン、クリプトン、キセノンなどのレアガスは、国内に大型空気分離装置が少なかったために、大半を輸入に頼ってきた。しかし、エレクトロニクス、照明、宇宙、省エネルギー分野などで幅広く利用されており、世界的に需要が増える中、供給がタイトになっている。また、日本政府は、これらのレアガスを安定供給確保すべき半導体製造プロセスにおける品目と位置付けており、経済安全保障推進法に基づき大陽日酸が示す「供給確保計画」を経済産業省の支援対象として認定している。これらの背景から大陽日酸では、レアガスの国内生産の増強を進める方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 半導体で構築進む対中国の壁
「経済安全保障」のもとに振り回される状況が続きそうです。 - 半導体製造装置23品目の輸出を規制する省令が7月23日に施行、経済安全保障で
日本政府は、半導体製造装置23品目を輸出貿易管理対象とする省令を2023年7月23日に施行することを発表した。 - 半導体製造装置企業の特許資産規模ランキング発表、1位は東京エレクトロン
パテント・リザルトは、半導体製造装置企業が保有する特許資産を総合評価した「半導体製造装置業界 特許資産規模ランキング」を発表した。1位は東京エレクトロン、2位はAPPLIED MATERIALS、3位はSCREENホールディングスとなっている。 - 先端ロジック半導体のファウンドリを国内誘致へ、半導体・デジタル産業の国家戦略
経済産業省は2021年6月4日、半導体産業やデジタル産業を国家戦略として推進する「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめ公開した。全ての産業の根幹にデジタル産業、半導体産業があると位置付け、先端ロジック半導体の量産化に向けたファウンドリの国内誘致推進などの戦略を紹介した。 - なぜ日本で2nmの先端ロジック半導体を製造しなければならないのか
半導体などマイクロエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2022」が2022年12月14日に開幕し、オープニングキーノートパネルとして、新たな半導体製造会社であるRapidusなども含む「半導体・デジタル産業戦略」に深く関わる主要メンバーが登壇し「グローバルリーダーを目指す産官学戦略」をテーマに、日本における半導体産業の在り方や社会変革の方向性などについて語った。 - 実生産炉でアンモニアを燃料に利用したガラス製造の実証試験に成功
AGCや大陽日酸、産業技術総合研究所、東北大学は、実生産炉でアンモニアを燃料に利用したガラス製造の実証試験に成功した。