汎用成形機で2色成形が可能に、キヤノンが自社開発の射出装置で新たなニーズ発掘:FAインタビュー(3/3 ページ)
キヤノンモールドは独自開発の小型射出装置と汎用成形機を組み合わせた2色成形システムを開発。2023年からキヤノングループの工場で同システムを量産に投入し、今後は外部に向けて販売もしていくという。開発担当者らに話を聞いた。
関連グループ会社も開発に協力、目指すのは金型の高付加価値化
通常、金型で成形したそれぞれの部品を金型から取り出して、1つ1つ並べ直して、位置を決めて組み立てが行われる。それが型内組み立てなら、金型の位置決めや樹脂を溶かす熱、成形するための型締め力も組み立てに活用でき、仕掛品も減らすことができる。
開発に当たってはキヤノングループの力を動員した。「電気の知識がないと作れない」(赤塚氏)と、グループでFAを専門に手掛けているキヤノンマシナリーに協力を仰ぎ、社員に出向もしてもらった他、キヤノンモールドのメンバーもリスキリングを目的としたキヤノングループの研修センターに赴き、電気などの知識を学んだ。「われわれは金型メーカーなのでメカ屋しかいない。一般の金型メーカーなら電気の知識を身に付けるのは難しいかもしれないが、その点はキヤノングループの強みを活用した」(赤塚氏)。
この2色成形システムは2023年からはキヤノンのプリンタのトナーカートリッジに使う部品の量産に使われている。専用機の価格や大きさがネックになって2色成形に取り組めていなかった企業もあるはず。キヤノンモールドでは、システム構築を一貫して請け負う。
赤塚氏は「業種を問わず提案できると思っている。気密性を高めるパッキン用途や滑り止め用途など金型という切り口でいえばアイテムは違ってもニーズは似通っている。装置を2つ付ければ3色成形にも応用できる他、この装置を使って2つを接合することで中空体も作れるなど、アイデア次第でさまざまな展開ができる」と述べる。
斎藤氏は「われわれは金型の高付加価値化を目指している。今回開発した小型射出装置を金型と一緒に展開することで、金型だけの販売から金型ソリューションの提供へと事業を拡げていくことができる。新たなニーズも取り込みながら、日本のみならず世界へと売り上げなどを拡大していきたい」と意気込む。
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