金属探知機を自作して宝探しの勝ち組に:注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(15)(2/2 ページ)
注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第15回は、ひそかなブームとなっている宝探しの勝ち組を目指して、金属探知機を自作する。
金属探知機の回路図
図2は今回作製した金属探知機の回路図です。今回は、よりシンプルに特定の金属をターゲットとします。これに対して、複数のターゲットを対象とした可変周波数タイプの金属探知機もありますが、今回は最初の製作ですので簡単な特定ターゲット用としました。
発振器はブロッキング回路
発振器はブロッキング回路を採用しています。金属探知機の発振周波数は、ほとんどがAF(Audio Frequency)帯域、いわゆる可聴帯域あるいはその周辺で収まっているのでこの発振方式を採用しました。特徴としては、とてもシンプルな回路構成で発振器を実現できることに加えて、可変抵抗(VR)1個の操作で周波数を変えられるのもポイントが高いですね。昔ラジオ少年だった読者のみなさんはこの発振方式の回路を当時の電子工作で大人気だった「電子びっくり箱」で知ったのではないでしょうか。ただし発振波形はきれいなサイン波ではなく、パルス状の波形を出力します。それでも金属探知機の用途には十分と思い、この発振方式を採用しました。
局発と混合回路
局発とは局部発振器の略です。この局発によって、コイルで発振する周波数と同じ周波数の発振を行います。発振器には、連載第8回と第9回で紹介した「NE555」を用いました。
この発振周波数は固定とします。ターゲットがよく反応する周波数を発振させるものとします。この発振出力は混合器と検出コイルで発振させた出力と混ざりあいます。すると何が起こるかというと、ヘテロダイン効果で2つの周波数の和と差が現れます。もし両者の周波数にずれが生じるといわゆるビート音、両者の周波数の差の周波数成分が生成されます。もちろん両者の周波数の和の成分も生成されるのですが、差のビート音の方がはるかに人間の耳には認識されやすいので、この差異検出音を金属の検出音とします。
出力アンプ
この差異検出音を「LM386」というアンプで増幅し、筐体内に設置したスピーカーを鳴らします。
コイル
図2のコイルは金属検出に用いるコイルです。ブロッキング回路で用いるので中間タップが必要です。
校正
NE555の抵抗R1と抵抗R2、そしてコンデンサーCの値を調整して、ターゲットが最も検出できる周波数を出力するようにします(図3)。
金属探知機の使い方
VRでスピーカーからの差異検出音の音量を調整します。テスト用の金属をターゲットに見立て、コイルをターゲットに近づけたり遠ざけたりしたときに差異検出音が変化することを確認してください。
可変周波数型金属探知機への展望
今回は金属探知機の中でも最も基本的な固定周波数型の金属探知機の作製に挑戦しました。この方式では1つあるいはその近辺に感受性のある金属しか狙えませんでした。それに対して可変周波数方式は、コイルとVRで発振する周波数を可変にすることで、その都度ターゲットを変更することが可能です。
ただし、局発の周波数もこれに伴い変更する必要があります。局発として用いているNE555では周波数の変更には2つの方法があります。1つは、NE555のコンデンサーCの値を固定にしてR1とR2の抵抗値を変えて周波数を変更します。もう1つは、R1とR2の抵抗値を固定にしてCを可変にする方法です。この場合、想定する周波数では、可変できるコンデンサー(例えばバリコンのようなもの)のCの値が大きすぎて民生品で探すのはかなり難しいでしょう。そこで、Cを固定してR1とR2の抵抗値を変える方法にしてみました。R1とR2の抵抗を半固定抵抗に変更します。NE555の発振出力のデューティ比で50%を求めるならばR1とR2の抵抗値は1対1をキープする必要があります。
おわりに
金属探知機を作ることは勝ち組のトレジャーハンターの第一歩です。他のトレジャーハンターに差をつけるためには金属探知機を自作してみることです。そうすれば、自分で思い通りにカスタマイズも可能になるので市販の高級金属探知機には性能では及ばなくても、その場その場で改造して最適な金属探知機に仕立てることが可能です。並み居るライバルの金属探知機など恐れるに足らずです。皆さんもこの手製金属探知機を手に華々しいトレジャーハンターの第一歩を踏み出してください。
この金属探知機はRF(Radio Frequency)へつながる第一歩の作例だと思います。RFの分野にはまだまだ宝の山が眠っています。皆さんもぜひ、RFの世界へのトレジャーハンティングに出掛けてみてください。
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