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定番タイマーIC「NE555」の無安定モードを深掘りする注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(9)(1/2 ページ)

注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第9回は、第8回で取り上げた定番タイマーIC「NE555」を発振器として使う無安定モードについて深掘りする。

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はじめに

タイマーIC「NE555」の製品化当初の外観
図1 タイマーIC「NE555」の製品化当初の外観[クリックで拡大] 出所:Wikipediaより、de:User:Stefan506, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, ウィキメディア・コモンズ経由で

 前回に引き続き定番タイマーICである「NE555」(図1)をテーマにすることにしました。今回は、NE555を発振器として使う無安定モードをハックしてみたいと思います。

 無安定モードは、NE555の使い方としては最もポピュラーなものの一つで、内部にある3本の直列抵抗の役割が最も際立つモードです。本稿の中でコンパレータの動作やフリップフロップの動作などはあまり詳しく説明しませんが、その辺りについては前回の記事を併せて読んでいただくことをお薦めします。

⇒連載「注目デバイスで組み込み開発をアップグレード」のバックナンバー

無安定モードとは

 図2はNE555を無安定モードで使うための回路です。このモードは、NE555を発振器として使うためのモードです。抵抗R1とR2、そしてコンデンサーのCが外付け部品です。これらの抵抗とコンデンサーの値によって出力の周波数とデューティ比を決めることができます。CTRLに接続されGNDに落ちているコンデンサーは、NE555に内蔵されているコンパレータの入力の一つに接続されたもので、NE555の動作を安定させるものです。無安定モードの動作には直接関わらないのでこの後の説明では登場しません。

「NE555」を無安定モードで使うための回路
図2 「NE555」を無安定モードで使うための回路[クリックで拡大]

 それでは無安定モードの動作を追っていきたいと思います。図3は、このモードの動作を説明するためにNE555の内部回路と外部接続回路を一緒に表したものです。黒線で示したのがNE555の内部回路です。青色で示した配線が外部接続回路となります。

「NE555」の無安定モード回路における内部回路と外部接続回路の構成
図3 「NE555」の無安定モード回路における内部回路と外部接続回路の構成。黒線が内部回路、青線が外部接続回路[クリックで拡大]

 電源電圧を9VとするとコンパレータAのマイナス入力には常に6Vの電位が印加されています。コンパレータBのプラス入力には常に3Vが印加されています。またフリップフロップのリセット入力の一つは常に0に設定されています。この入力はインバーターを介して接続されていますのでその入力を+電源に接続することにより出力は常に0になります。

コンデンサーが放電し切った状態からスタート

 図2は、NE555の電源投入時の状態を示しています。外付けコンデンサーは放電しきった状態を前提としているのでその電位は0Vとします。その電位がコンパレータAのプラス入力とコンパレータBのマイナス入力に接続されています。この時の2つのコンパレータの出力を見てみましょう。コンパレータAはマイナス入力には6V、そしてプラス入力には0Vが印加されています。コンパレータの動作はプラス入力がマイナス入力を上回ると出力は1となります。2つある入力がその逆だと出力が0となります。よってこの状態ではコンパレータAの出力は0となります。コンパレータBに目を移すとプラス入力には3Vが印加されています。そしてマイナス入力は0Vとなっています。するとコンパレータBの出力は1となります。

 次にフリップフロップの出力を見ていきましょう。フリップフロップのリセット系の端子は0と0です。そしてコンパレータBの出力は1ですからフリップフロップはセットされ出力は1となります。その出力はインバーターを介して0がトランジスタのベースに接続されています。この状態ではトランジスタのコレクタからエミッタは導通しません。コンデンサーは9Vの電源からの電流が2つの抵抗を介して流入して電位は上昇していきます。そしてこの状態ではもう1つインバーターを介していますのでNE555の出力は1となります。

 なお、本稿ではトランジスタはNPN型のバイポーラトランジスタを前提にして説明しています。CMOSトランジスタ型のNE555であれば、トランジスタのそれぞれの端子はベースをゲート、コレクタをドレイン、エミッタをソースと読み替えてください。

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