商社がなぜ野菜作り? データドリブンな植物工場事業モデルで目指す社会課題解決:スマートアグリ(3/3 ページ)
RYODENが新規事業の1つとして取り組むスマートアグリ事業。商社がなぜ植物工場経営に進出したのか、どのような事業構想を抱いているのかを聞いた。
IoTで1日の時間を人工的に制御、ピーク電力を抑制し省エネも実現
植物工場は昼と夜を人工的に作り出す。Remcesは品種に合わせて棚ごとに昼夜の時間をコントロールし、1日の時間を最適化するだけでなく、電力の使用量を常に一定に保つように昼夜の時間を制御し、電気代の節約に貢献している。
種まきから1カ月程度で収穫となる。現状の収穫量は1日約2tで、工場内で包装、冷蔵保管まで行い、大手コンビニエンスストアや大型スーパーマーケットに出荷している。屋内で栽培することで虫や菌などの混入を抑え、農薬を使わずに鮮度も長く保つことができるため、「ここで栽培したほうれん草は生食ができる」(丸山氏)。
ほうれん草などの葉物野菜だけでなく、香草の栽培にも取り組む。露地野菜が出回る時期と重ならないように、多品種変量生産によってリスクマジメントを図り、最適なポートフォリオを目指している。ハウス食品グループと、植物工場産野菜を使用した付加価値製品の共同開発も進めている。
トラックドライバーの時間外労働に上限が課されることなどから生じる物流の2024年問題。農産物の輸送にも影響が及ぼす恐れがある。場所に制限がない植物工場は、産地から消費地までの距離を短縮することができ、問題解決の1つに選択肢にもなり得る。このように植物工場はさまざまな可能性を秘めている。
ブロックファームの目的も野菜販売での売り上げ拡大ではなく、植物工場の事業モデルの創出だ。RYODENがファームシップを関連会社化したのも、バリューチェーンの機能をグループでそろえ、市場への投資を促進するためでもある。折しもRYODENは創業100周年を見据えて、これまでの商社から事業創出会社へと転換を図っている。
「事業領域を広げるという会社の方針に沿っており、自ら工場を作り、野菜を作り、そして仕組みを作ることで、植物工場の栽培モデルや運営システムを定型化して外部に提供するなど、参入機会を増やして社会的課題の解決に貢献したい」(新田氏)。
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