日本ミシュランのAM共創拠点が地元企業と金属3Dプリンタ活用、新規事業を拡大へ:金属3Dプリンタ(2/2 ページ)
日本ミシュランタイヤは太田サイト内に開設した金属3Dプリンタによる積層造形技術の共創拠点「ミシュランAMアトリエ」を報道陣に公開した。
群馬県内の企業と立ち上げたGAMとともに人材育成、実用化、研究開発を進める
GAM 代表理事で共和産業 代表取締役社長の鈴木宏子氏は「GAMは人材育成、実用化、研究開発の3つを大きな目的としている。金属3Dプリンタを導入することでどんな技術的メリットが企業にあるかをコンサルティングしたり、PoC(概念実証)を行ったりして実用化をサポートする他、サロン会員の間ではノウハウを共有している」と語る。
現状では、AddUpの装置導入を検討する企業から寄せられた依頼やGAMの会員による試作で、2台の金属3Dプリンタは平日ほぼフル稼働しているという。鈴木氏は「まずGAMとして実績を重ねていき、いずれは新たな設備も活用したい」と話す。金属の粉末に液体の結合剤を吹き付けて固形化するバインダージェット方式にも着目しており、「欧州ではバインダージェット方式の金属3Dプリンタが広がってきている。より複雑な形状が造形でき、小さなワークも効率よく造形できる」(鈴木氏)という。
現在、GAMでは形状に合わせて内部冷却炉を設けたコンフォーマル冷却金型と少量生産品への金属AMの適用を進めている。直近では、フランスの国立産業技術センターにあたるCETIMがサロン会員に加わった。「欧州では航空宇宙産業などが盛んで、AMの活用も進んでいる。CETIMとタイアップして新たな技術開発にも取り組んでいる」(鈴木氏)。
伊藤氏はミシュランガイドがもともと、タイヤの使い方や修理方法、自動車で移動する際に休憩できるホテルや飲食店などを冊子で紹介することで、運転の不安を和らげ、タイヤの需要を喚起していった歴史を振り返りながら、「GAMを通してAM技術の素晴らしさと、技術に興味を持っていただく方の裾野を広げていきたい。一歩踏み込んでいただく方を増やしていった結果が、われわれのビジネスにもつながっていくと期待している」と話す。
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