ウェザーニューズとオムロンが気象IoTセンサーで協業、15カ月で開発を完了:製造業IoT(2/2 ページ)
ウェザーニューズとオムロンが新型気象IoTセンサー「ソラテナPro」を発表。電源が得られる場所であればユーザーが任意の場所に簡易に設置でき、7つの気象に関わる要素を1分ごとに観測して内蔵のLTE-M通信モジュールによってクラウドにデータ収集できる。
オムロン岡山事業所のコンカレント開発の体制にウェザーニューズが加わる
ソラテナProの大きな特徴としては設置のしやすさがある。ウェザーニューズ Mobile/Internet事業部 グループリーダーの上山亮佑氏は「当社は陸海空のあらゆる市場に気象情報を提供しているが、中でも需要が高まっているのが現場における気象データの観測だ。しかし、従来の観測機はコストが高く、通信/データ面での準備に手間がかかり、設置場所を確保が困難という障壁があり、実際には設置に至らないということが多かった」と語る。
本業がサービス提供であるウェザーニューズとしても、これらの障壁を打破すべく、自社による設計開発で気象IoTセンサーのソラテナを製品化したものの、やはり設置に一定の手間がかかることが課題になっていた。「今回、センサーをはじめハードウェアの専門家であるオムロンと共同開発したソラテナProは、雨風の計測上限を高めただけでなく設置が簡単なことも大きな特徴だ。これによって、電源が得られるとともにLTE-Mの通信が可能であればどこにでも設置して気象データを観測できる」(上山氏)という。
ソラテナProは購入とレンタル(1カ月から)、2つの方式で販売する。価格は要問い合わせとなっている。上山氏は「1台購入する場合であれば、本体価格はPC1台分、月額利用料は携帯電話の月額利用料1台分というイメージを想定していただければ」と説明する。
ウェザーニューズとオムロンの関係は、小型気象センサーである「WxBeacon2」での協業が起点となっている。オムロン デバイス&モジュールソリューションズカンパニー 営業統轄本部 新規事業推進部長の岡孝則氏は「オムロンの長期ビジョン『Shaping the Future 2030』に向けて、当カンパニーではカーボンニュートラルの実現を注力ドメインとしている。ソラテナProの開発では、このカーボンニュートラルと大きな関わりを持つ気象変動への対応に貢献できることに加えて、スピーディーな商品開発にも挑戦した」と強調する。
オムロンのデバイス&モジュールソリューションズカンパニーでは、岡山事業所(岡山市中区)に商品企画や設計開発に関わる従業員が集結しており、コンカレント(同時並行型)開発が可能な体制を構築している。「今回は、このコンカレント開発に共同開発パートナーであるウェザーニューズが加わったことが新たな取り組みになっている」(岡氏)。
オムロンとして、ソラテナProの開発で課題になったのが、センサーのプロではあるが気象のことは詳しく分からないことだった。岡氏は「実際に開発したセンサーで、さまざまな現場での気象観測ができるかどうかは分からない。そこで、気象のプロであるウェザーニューズの協力を得て、さまざまな現場でのフィールド試験を通じて気象観測の精度を向上していった。また、試験から気象観測精度の向上というサイクルを素早く回すことで開発期間を大幅に短縮できたと自負している」と述べる。
2022年3月にスタートしたソラテナProの開発期間は15カ月。「個人的な意見にはなるがウェザーニューズとオムロンが一体となったコンカレント開発によって開発期間を半減できたのではないか」(岡氏)としている。
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