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ショックの原因を診断する簡易超音波検査の有用性を確認:医療技術ニュース
横浜市立大学は、ショックの原因をベッドサイドで診断するポイントオブケア超音波検査の診断精度について、その有用性を明らかにした。
横浜市立大学は2023年6月15日、ショックの原因を診断するポイントオブケア超音波検査について、その有用性を明らかにしたと発表した。同大学データサイエンス研究科准教授の水原敬洋氏らの研究チームによる成果だ。
ポイントオブケア超音波検査は、血圧が低下し、瀕死の状態になる急性の症候群であるショックの原因を、臨床医が超音波検査を用いてベッドサイドで診断する手法だ。
研究チームは、2022年6月までに出版された医学文献から関連する研究を検索し、最終的に1132人の患者を含む12件の研究を対象に統合解析を実施した。研究ごとの感度、特異度、陽性尤度比、陰性尤度比について統合解析し、統合感度および特異度、統合ROC曲線とその曲線下面積を算出した。
閉塞性ショック、心原性ショック、循環血液量減少性ショック、血液分布異常性ショック、混合性ショックの5つについて診断精度を検証したところ、全てにおいて0.9以上と特異度が高いことが明らかとなった。また、陽性尤度比も全てのショックの原因において高く、10を超えていた。1に近いほど診断能力が高いことを示すROC曲線下面積は、それぞれのショックに対する統合ROC曲線下面積が約0.95だった。
これらの結果から、ポイントオブケア超音波検査が確定診断の際に有用であることが示された。特に閉塞性ショックでは特異度が0.98、陽性尤度比が40と高く、非常に有用であることが判明した。
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