アストロスケールが新本社を公開、衛星を生産するクリーンルームの見学も可能:宇宙開発(2/2 ページ)
アストロスケールホールディングスが2023年5月に移転した東京墨田区の新本社を報道陣に公開した。
フランスのCNESと契約、英国国王の「アストラ・カルタ」にもコミット
新本社公開と併せて行った会見では、2023年に入ってからのアストロスケールホールディングスの事業展開についての説明が行われた。
現在の同社の従業員数は約450人で、新本社に入居する同社の日本法人のアストロスケールの他、英国、米国、イスラエル、シンガポール(現在は休眠中)、フランスで事業を展開している。2023年6月に加わったフランスでは、CNES(フランス国立宇宙研究センター)との間でデブリ除去に関する契約を締結するなどさらなる事業規模拡大で重要な役割を果たしている。累計調達額についても435億円に達している。
アストロスケールホールディングス 創業者 兼 CEOの岡田光信氏は「広島で行われたG7サミットや、G7科学技術大臣会合において、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用に対するコミットメントが表明され、デブリ問題への取り組みが強く奨励された。2013年の創業当時にはデブリ問題が全く注目されていなかったことを考えると隔世の感がある」と語る。
アストロスケールホールディングスの海外拠点で最大となる英国では、岡田氏が同国首相のリシ・スナク氏とスペースサステナビリティについて意見を交わすなどしている。「2023年6月28日には、英国国王のチャールズ3世が宇宙の持続利用のイニシアチブ『Astra Carta(アストラ・カルタ)』を立ち上げており、当社としてもその考え方に賛同するところだ」(岡田氏)とし、積極的に関わっていく方針を示した。
同社の今後のミッションとしては2023年度内打ち上げ予定の「ADRAS-J」が直近のものとなる。ニュージーランドのマヒア半島から打ち上げる予定で、ロケットはRocket Labの「Electron」を使用する。ADRAS-Jは、コア技術となる「RPO(Rendezvous and Proximity Operations)」によって、デブリに近接接近して至近距離で調査することとなる。
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