オムロンが最新卓球ロボットで体現する融和、人と人をつなぐオートメーション:協働ロボット(2/2 ページ)
オムロンは京阪奈イノベーションセンタ(京都府木津川市)においてラウンドテーブルを開催し、同社の技術開発や具現化の方向性、研究子会社であるオムロンサイニックエックスの活動内容などに関して説明した。今回は前編として最新の卓球ロボットのコンセプトや同社が目指す人と機械との関係性などを紹介する。
オムロンが目指すオートメーションに欠かせない、人と機械の融和
フォルフェウスは2013年に初代が開発され、現在は第7世代となっている。当初は人と卓球するだけでも精いっぱいだったのが、その後、プレイヤーをコーチングしたり、モチベーションを高めたりするコンセプトが加わってきた。名前はFor(向かう)とOrpheus(ギリシャ神話に登場する吟遊詩人)の組み合わせに由来する。
オムロン 技術・知財本部 ロボティクスR&Dセンタ ロボティクス開発部の水山遼氏はフォルフェウスについて「人と機械の融和とは何か。われわれが次の10年で目指す人が活きるオートメーションを達成するために、人と機械の関係性において重要な点が3つある。人がやりたくないことを機械がやってくれる代替、人と機械が互いの良さを生かして良いものを生み出す協働、人の可能性を機械が引き出す融和という3つのどれもが欠かせない。その融和を体現してきたのがフォルフェウスだ」と説明する。
そういった、人を打ち負かすのではなく、人を楽しませ、成長させることを目的としてきたフォルフェウス最新第7世代のコンセプトは、人と人をつなぐオートメーションだ。これまでのように1人のプレイヤーの能力向上を図るのではなく、ダブルスを組む2人のプレイヤーのチームパフォーマンス向上を目指す。
具合的には卓球を通して2人が互いに感情や能力を共有し、相互理解を深めることを目指す。ボールの3次元位置やプレーヤーの骨格、表情、ラバーの劣化度を見る合計6つのカメラを備えており、2人の表情や心拍数、瞬き、動きなどを捉え、動作や感情の同期性から、内面的な共感度と運動の連携度をセンシング、推定して数値化する技術を編み出した。
さらに、2人の共感と連携を高めるため、AIを活用してラリーの返球速度やテンポ、コースなど最適な返球パターンを導き出す。それを実現するため、返球精度を高め、可動域を広げる制御技術を構築している。
デモンストレーションではプレーの内容によって共感度や連携度が刻々と変化する様子が画面に映し出された。
水山氏は第7世代の特長について「共感度では、感情が動くと表在してくる体の反応から、ただ互いに楽しめているかだけでなく、喜怒哀楽の波がそろい、感情を共有できているかを見ている。喜怒哀楽の波がそろっていれば、互いに感情移入していると推定している。連携度では、2人の体の動き方や返す球のスピードなどから、ダブルスとして互いの能力を把握しているか、動きを予測できているかなどを見ている。速い球が来れば速い球を返すように設計されているが、共感度や連携度が低ければまずは関係性を作れるようにラリーのスピードを遅くしたり、理解が深まってくれば速くしたりすることができる」と語る。
それ以外にも、ロボットの動作とカメラの撮影を同期させて返球精度やラバーの表面状態をカメラ画像からセンシングし、ラケットのラバーの汚れなどもロボットが自己診断できるようになっている。ラバーの汚れなど表面状態の変化による目標返球位置からのずれに対して、返球の際のラケットの高さや角度を制御し、自動で高い返球精度を持続できる。
後編ではオムロンサイニックエックスにおける最近の取り組みについて取り上げる。
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