三菱電機が現場ノウハウ生かしたクラウドサービスを2023年内に、OTセキュリティも:日本ものづくりワールド 2023
三菱電機は「日本ものづくりワールド 2023」に出展し、2023年内にサービス開始予定のモノづくりデータを活用したクラウドサービスのコンセプトを参考出品した他、同サービス展開に必須となるOTセキュリティサービスを紹介した。
三菱電機は「日本ものづくりワールド 2023」(2023年6月21〜23日、東京ビッグサイト)内の「第35回 設計・製造ソリューション展」に出展し、2023年内にサービス開始予定のモノづくりデータを活用したクラウドサービスのコンセプトを参考出品した他、同サービス展開に必須となるOTセキュリティサービスを紹介した。
三菱電機では、以前から展開するシーケンサー(PLC)やサーボモーターなどの制御機器に加え、新たにこれらで得られたデータを活用するさまざまなソフトウェア製品の展開を強化している。2021年3月にはSCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)ソフトウェア「GENESIS64」を発売した他、2022年4月にはデジタル空間上に3Dで生産設備や生産ラインを構築し、生産現場での業務プロセスを実機レスで容易に検証できる3Dシミュレーター「MELSOFT Gemini」を発売。さらに、最適なデータ分析をAI(人工知能)が支援するソフトウェア「MELSOFT MaiLab」なども用意し、ソフトウェア領域のラインアップ拡充を図ってきた。
これらのモノづくりデータを活用するソフトウェアに加え、さらに今後はこれらで得られたデータを活用したサービスの展開などを進めていく方針だ。モノづくりに関わるデータを一元的に共通データーベースに集約したデータ活用プラットフォームを構築し、これらを状況に応じたアプリケーションで活用する「製造業向けクラウドサービス」を2023年内に立ち上げる計画だ。三菱電機 インダストリー・モビリティBA戦略室 技術ユニット長の秋田裕之氏は「三菱電機のFA領域にとって機器ビジネスはあくまでもベースだと考えている。ただ、そこで得られるデータを活用するビジネスを広げていく。これらを伸ばすことが、機器ビジネスにも好影響をもたらす」と考えを述べている。
製造業向けクラウドサービスを2023年内に立ち上げ
新たに立ち上げる製造業向けクラウドサービスは、主に2つの構成で成り立つ。1つ目は、モノづくりに関連するデータを利活用できる形で収納できる共通データベースを構築することへの支援である。もう1つが、こうしたデータを活用するアプリケーションの展開だ。秋田氏は「どちらもモノづくりの知見がある三菱電機だからこそできることだ。データの収集についてもどう使うかという観点や現場に負荷をもたらさないという観点がないと正しく集められない。また、三菱電機そのものがこうした共通データベースの構築に取り組んでいるところで実体験したノウハウを生かすことができる。そこが他のベンダーなどとの差別化になる」と語る。
日本ものづくりワールド 2023で展示された製造業向けクラウドサービスのリモート監視をイメージしたデモ。下のPC部分は遠隔地にあるという想定で、問題があったときに関連するデータが同時に飛ぶようになっている[クリックで拡大]
データベースの構築などのノウハウは三菱電機のFA部門では従来は抱えていなかったが、三菱電機グループ内の他分野からの人材を活用する他、外部のパートナーシップを有効に活用していく方針だ。「詳細についてはまだ話せないが、1社や1部門で何とかすることは考えていない。足りない部分は外部も使いながらオープンな形で進めていく」(秋田氏)。アプリケーションについては「リモート開発」「リモート保守」「リモート監視」「装置メーカー向けリモート保守サービス」などを計画しているという。
日本ものづくりワールド 2023では、「リモート監視」を想定したサービスの形を示した。製造現場の機器データや映像データなどを常に記録し、エラー発生時に遠隔地にいる担当者にメールが飛ぶというものだ。メールには必要な機器データや映像データが一緒に送付されており、何が起こったのかを遠隔地でもすぐに把握できる。「一部のサービスは既に提供されているものもあるが、体系化してあらためてリリースする。アプリケーションの数をさらに広げていく」(担当者)としている。
データサービスに必須のOTセキュリティサービスも開始
これらのデータサービス強化に合わせて必須となるOTセキュリティサービスについても新たに開始する。工場現場のサイバーセキュリティ対策については、通常のITセキュリティなどと異なる点も多く、製造現場の可用性を損なわない形で組み込んでいく必要がある。製造現場を知り尽くした三菱電機がこれらを展開することで、現場に最適なセキュリティを確保するということが狙いだ。
三菱電機 インダストリー・モビリティBA OTセキュリティ事業推進部長の柴田剛志氏は「金融業界向けにセキュリティサービスを展開していたメンバーなどを集めてITとOTの両面で強調してセキュリティを構築できる体制を整えている。ただ、セキュリティについての製品全てを三菱電機内で抱えているわけではないため、最適なセキュリティ製品を三菱電機が見極めて、各現場に最適なセキュリティの在り方を提案できるようにしていく。そのためOTセキュリティ“サービス”としている」と語る。
具体的には、OTセキュリティについてのリスクアセスメント/コンサルティングサービスから、対策の実装、運用を支援するサービスなどを展開する。また、工場のセキュリティ状況を24時間監視してセキュリティインシデントの発生時にこれらのアラートと対策支援を行う「セキュリティオペレーションセンターサービス」なども用意している。システム面では、金融業界などでも実績のある「環境分離サービス」「通信見える化サービス」「端末制御サービス」「持ち込み媒体対策サービス」「ネットワーク防御」「リモートアクセス制御」などを提供する予定だ。
「セキュリティオペレーションセンターは既に金融業界向けでは実施しているサービスで、そのOT版の仕組みを新たに構築した。金融向けのメンバーやOT向けのメンバーなどの混在チームとなっており、インシデントの検知だけでなく対策への支援も直接的に行えるようにしていく」と柴田氏は語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 設備異常をドライブレコーダーのように把握、三菱電機が保全ソリューションを紹介
三菱電機は、「第7回スマート工場EXPO」において、機器の設備情報を同一タイムラインで記録し、異常時にはドライブレコーダーのような形で起こった事象を簡単に解析できる「システムレコーダー」による稼働監視ソリューションのデモンストレーションを行った。 - 三菱電機が初のFAプライベートフェア、デジタル技術による進化したモノづくり提案
三菱電機はFA機器事業の新製品をユーザーに紹介する「FAプライベートフェア2023」を初めて開催した。 - 「循環型デジタル・エンジニアリング」に勝負を懸ける三菱電機が進める2つのDX
三菱電機は、投資家向けの経営戦略発表会を開催。中期経営計画の進捗度を説明するとともに、新たな成長の軸として打ち出す「循環型デジタル・エンジニアリング」の推進方法について紹介した。 - 3Dラインシミュレーターで生産ラインの立ち上げを容易に、三菱電機が新製品
三菱電機は2022年3月29日、デジタル空間上に3Dで生産設備や生産ラインを構築し、生産現場での業務プロセスを実機レスで容易に検証できる3Dシミュレーター「MELSOFT Gemini(メルソフトジェミニ)」を同年4月28日に発売すると発表した。生産現場における生産設備や生産ラインの導入や稼働前にプロセスの最適化を実現でき、工数削減や品質向上に貢献する。 - 当たり前のようにスマート工場がサイバー攻撃を受ける時代に求められるもの
スマート工場化が加速する一方で高まっているのがサイバー攻撃のリスクである。本連載ではトレンドマイクロがまとめた工場のスマート化に伴う新たなセキュリティリスクについての実証実験研究の結果を基に注意すべきセキュリティリスクを考察してきた。最終回となる今回は、スマート工場の構築および運用における本質的な課題を明らかにするとともに、行うべきセキュリティ戦略を提示する。