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エッジマネジメントのサービスやベンダーはどう選ぶ? 賢いユーザーであるためにPoCの壁を超えろ!新時代のIoT活用戦略(3)(2/2 ページ)

IoT活用は本格化しつつあるがPoC(概念実証)止まりになっている事例も多い。PoCの壁を超えるのに注目を集めているのが「エッジマネジメントサービス」だ。最終回の第3回は、エッジマネジメントのサービスやベンダーの選び方、見極め方を解説する。

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エコシステムの力がユーザーに多様なメリットをもたらす

 エッジデバイスのマネジメントに関しては、運用管理をやってみて初めて実感できる課題も多いはず。ユーザーはもちろん、IoTデバイスやエッジデバイスのメーカー、ネットワーク機器/サービスのベンダー、AI(人工知能)のインテグレーションを行うAIer、そしてクラウドサービスベンダーといったパートナーも巻き込んでビジネスエコシステムがしっかり構築され、そこから意見を吸い上げてブラッシュアップを重ねているサービスは選択肢として有力だ。過去に先人が経験した課題に対するソリューションが機能として盛り込まれている可能性が高い。これはエッジマネジメントサービスに限ったことではないが、エコシステムに参加することで「相乗り」効果が得られるサービスを選定することも有効といえる。

 筆者の所属するNTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)も、AI共創パートナープログラム「Innovation LAB」を展開している。先進的なAI技術を通して社会や産業にイノベーションを起こそうと志すAIerやITベンダー、非ITベンダーを含む民間企業/団体、学術機関、官庁/自治体など、既に70の企業や団体が参加しており、新たなサービス開発などに取り組んでいる。エッジAIの裾野拡大につながるエッジマネジメントサービスについても、Innovation LABでパートナーと一緒につくり上げており、近くリリースする予定だ。

AI共創パートナープログラム「Innovation LAB」のイメージ
AI共創パートナープログラム「Innovation LAB」のイメージ[クリックで拡大] 出所:NTTPCコミュニケーションズ

国内ユーザーのIoT支出は2027年には8.7兆円に

 IoTの導入は、それなりの投資体力が必要な場合が多いことから、中堅〜大企業に偏っているのが実情だ。しかし、エッジマネジメントサービスがエッジデバイスやAIアプリケーションなどと組み合わせてパッケージ化されるようになれば、オンラインのマーケットプレースや、全国に販売網を整備しているITディストリビューターの商流などで扱いやすくなる。中小企業向けの販路が広がり、高度なIoT/AIソリューションを低コストで実現、運用できる環境が整備されていく。そうなれば、IoTの市場拡大は一層加速することになる。

国内IoT市場の技術別の支出額規模予測と支出額割合。2022年と2027年の比較
国内IoT市場の技術別の支出額規模予測と支出額割合。2022年と2027年の比較[クリックで拡大] 出所:IDC Japan(2023年6月)

 IT専門調査会社であるIDC Japanは、国内IoT市場におけるユーザー支出額について、2022年の実績は5兆8177億円、2022〜2027年の年間平均成長率は8.5%で、2027年には8兆7461億円まで拡大すると予測している。エッジマネジメントサービスがより幅広く浸透することで、IoT市場全体の成長がさらに加速する可能性もある。

おわりに

 エッジマネジメントサービスは比較的安価に、手軽に導入できるサービスだ。一方でこの連載を通じて解説してきた通り、IoTの導入における最大の課題である、運用管理業務の負荷と人材不足を解決できるソリューションであり、非常に投資対効果が高いともいえる。

 製造業のような歴史のある企業が多い産業分野では、IoTの導入やIoTを活用した新サービスの立ち上げ時に、エンジニアのリソースが潤沢であることのほうが珍しい。開発エンジニアがアプリケーションやサービスの開発に集中できる環境をしっかり整え、IoTによる提供価値を最大化するためにも、エッジマネジメントサービスの導入は有効な手段ではないだろうか。

 ただし、こうしたサービスは全体的にまだ認知度が低く、運用管理の課題を実感しているIoT事業者やユーザー、導入支援ベンダーにもそれほど広く知られていない。既存の有力サービスには、大規模ユーザーを想定した高額なサービスもあり、そうした市場のイメージが裾野を狭めている側面もある。エッジマネジメントサービスの提供事業者に加えて、前述したようなIoTソリューションに関わるさまざまな立場の事業者が知見を持ち寄り、サービスのブラッシュアップに努めていくことも重要だ。

 IoTを活用したビジネスを検討する際は、自社のニーズに合ったエッジマネジメントサービスを採用することでコスト構造が改善され、成長への道筋を描きやすくなるのは間違いない。まず「エッジマネジメントに着目せよ」を合言葉にすることが成功への近道だと提言して、連載の結びとしたい。(連載完)

筆者プロフィール

大野泰弘(おおの やすひろ) 株式会社NTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部

さまざまな企業のコンサルティングを実施するシステムエンジニアとして活動。現在は成長領域であるAI/IoTに注力しており、AI/IoTの現場導入を促進するサービスの企画、開発を担当。

細野泰剛(ほそのやすたか) 株式会社NTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部 主査

トータルVPNソリューション「Master'sONE」のサービス企画、プロダクトオーナーとして活動。現在はAI/IoT部門のサービス企画、開発を担当。

株式会社NTTPCコミュニケーションズ エッジマネジメントサービス
https://www.nttpc.co.jp/service/product/edgemanagement/

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