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IoTの現在地とビジネス活用を阻む壁、どうすれば乗り越えられるのかPoCの壁を超えろ!新時代のIoT活用戦略(1)(1/2 ページ)

IoT活用は本格化しつつあるがPoC止まりになっている事例も多い。PoCの壁を超えるのに注目を集めているのが「エッジマネジメントサービス」だ。第1回はエッジマネジメントサービスのニーズが高まっている理由を解説する。

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 少子高齢化が進み人口減少のフェーズに入った日本では、生産年齢人口(15〜64歳)の減少への対策が待ったなしの状態だ(図1参照)。政府の統計では、1995年の約8700万人をピークに、2020年には約7500万人まで減少。2050年には約5300万人と2020年比で7割程度の水準になり、2065年には約3380万人になると予測している。あらゆる企業にとって、デジタルテクノロジーの活用を前提に、業務効率化を進めたり、ひいては業務の抜本的な再設計に取り組んだりといった施策が重要な経営課題として浮上している。

2065年の生産年齢人口の予測
2065年の生産年齢人口の予測[クリックで拡大] 出所:NTTPCコミュニケーションズ

 こうした課題に対応するための有力な手段の一つとして、IoT(モノのインターネット)への期待は年々大きくなっており、実際にその活用シーンは拡大している。IoTデバイスも多様化し、近年、特にエッジコンピューティングに対するニーズの高まりは顕著だ。IoTデバイス(センサーデバイス)から受け取ったデータをIoTゲートウェイなどのエッジデバイスである程度処理することで、より高いリアルタイム性を持った状態で迅速なデータ活用を実現したり、最小限のデータのみをクラウドに送信して通信コストの最適化や情報漏えいリスクの軽減を図ったりといった事例が増えている。エッジデバイスにAI(人工知能)を搭載して、業務の生産性を飛躍的に向上させるIoTソリューションを構築するといった取り組みも、以前と比べれば随分とハードルが下がった。

 ただし、IoTの導入がPoC(概念実証)止まりで、ビジネス上の成果につなげられていないケースも依然として多い。その要因となっているさまざまな課題を網羅的に解決できる可能性があるサービスとして、エッジデバイスの一元管理などによりIoTの運用を支援するサービスが注目されている。本連載では、これらを「エッジマネジメントサービス」と定義し、IoTの導入推進にどのように寄与するのかをさまざまな角度から分析するとともに、サービス選定のポイントなども解説する。第1回の今回は、エッジマネジメントサービスが今なぜ求められているのか、その背景を掘り下げる。

パブリッククラウドの閉域サポートでIoTの裾野はさらに拡大

 IoTにおいてエッジコンピューティングの活用が広がっている背景には、セキュリティやプライバシーへの配慮に対する課題意識が高まっていることが挙げられる。例えば、カメラで収集した自動車の情報をデジタルサービスに活用するような場合、撮影した映像をそのままクラウドサーバに送るのではなく、エッジ側でいったんデータを処理し、車種やナンバーなどの情報を読み取って送信するのがスタンダードになっている。必要な情報のみをやりとりすることで、プライバシー侵害などにつながる情報が漏えいするリスクを下げているわけだ。

 さらにここに来て、IoTのさらなる拡大につながる大きな環境変化が起こっている。有力なパブリッククラウドのIoTプラットフォームサービスが閉域ネットワークに対応するようになり、閉域IoTを手軽に実現できる環境が整ってきたのだ。例えば、クラウドサービスのトップベンダーであるAWS(Amazon Web Services)が提供する、IoTデバイスがクラウドアプリケーションやその他のデバイスとセキュアにデータをやりとりできるようにするマネージド型クラウドサービス「AWS IoT Core」は、2021年7月から閉域ネットワークのサポートを開始している。

 NICT(情報通信研究機構)によれば、同機構が運用するNICTER(サイバー攻撃観測網)が観測したサイバー攻撃関連通信のうち約4割がIoTデバイスを狙ったものだったという。総務省はこうした状況を受け、IoTセキュリティのガイドラインを整備している他、2020年4月以降、IoTデバイスのメーカーに対して、アクセス制御やソフトウェアのアップデート機能など最低限のセキュリティ対策を義務付けている。閉域IoTは、市場の黎明期から深刻な課題であり続けているセキュリティ対策という観点で非常に有効であり、IoTの裾野をさらに広げる可能性もある。

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