IoTの現在地とビジネス活用を阻む壁、どうすれば乗り越えられるのか:PoCの壁を超えろ!新時代のIoT活用戦略(1)(2/2 ページ)
IoT活用は本格化しつつあるがPoC止まりになっている事例も多い。PoCの壁を超えるのに注目を集めているのが「エッジマネジメントサービス」だ。第1回はエッジマネジメントサービスのニーズが高まっている理由を解説する。
運用管理の負荷が依然として大きな課題に
一方で、IoTの導入検討時に顕在化した課題がなかなか乗り越えられず、本格導入に至らない、もしくは導入してもビジネス上の成果につながらないという企業もまだまだ多い。具体的に、何がIoTで成果を出す上での課題となっているのか。筆者が所属するNTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)の顧客やパートナー企業にヒアリングした結果からも、実態が浮き彫りになっている。
ある企業がエッジAIカメラを活用したIoTサービスを開発、ローンチしたところ、顧客は順調に増え始めた。それ自体はポジティブなことだが、カメラの配置が拡大していくにつれ、稼働が安定しないデバイスが出てきたり、アプリケーションのアップデートがうまくいかずデータが取得できなくなったりといったトラブルも増え、デバイスを設置している現地に開発エンジニアが出張して対応するという事態が頻発した。
ユーザーに廉価で提供しているサービスであるほど、こうしたメンテナンス対応のための出張費は資金繰りを圧迫する。サービス立ち上げ期となれば、なおさらその影響は大きい。ヒアリングに対するIoT事業者などの回答を整理すると、事業設計時の運用コストは最大でも総コストの10%程度に設定しているが、運用が制御できずにコストが膨らみ、総コストが想定の140%にまで肥大化したケースもあった。
また、開発者の人的リソースがメンテナンス対応に割かれてしまうことで、サービスの機能拡充なども停滞しがちになる。結果として、社内でも事業の将来性がなかなか評価されず、追加の投資についての判断も慎重になり、サービス終了に追い込まれてしまった事例もある。
自社の事業や業務にIoTを導入したいと考えるユーザー企業も、運用管理で課題を感じている。自分たちでデバイスをしっかりとメンテナンスして、データを安定的に取得/活用したいと考えるユーザーは少なくないが、エッジデバイスのメーカーごとに独自の管理ポータルが提供されていて一元的な運用管理ができなかったり、そもそもポータルが存在せずコマンドラインで設定を操作しなければならなかったりハードルは多い。IoTの導入支援などを手掛けるNTTPCのパートナー企業にヒアリングしたところ、導入検討を開始した企業の8割は運用管理のコストや人員確保のハードルを越えられず、PoC止まりでプロジェクトを終えてしまうという。
総括すると、目下の課題は2つにまとめられる。IoTが普及してきたからこそエッジデバイス側のトラブルが増え、現状では都度現地で対応しなければならない場面も多く、運用管理の負荷が高まっていること。そして、そうした業務を開発者が兼務しなければならない状況が一般的であることだ。
これらの課題を解決するサービスとして注目が高まってきているのが、冒頭に挙げたエッジマネジメントサービスである。エッジデバイスのメーカーを問わず、導入しているエッジデバイスを一元的かつ効率的にリモートで運用管理するための機能をパッケージ化して提供しているものが一般的だ。前述した通り、ニーズが高まっている閉域IoTに対応したサービスも登場してきている。運用管理の負荷軽減や人的リソースの削減、コストダウンが期待できるサービスだと言えよう。
今回はエッジマネジメントサービスに注目が集まっている背景を説明した。次回は、エッジマネジメントサービスを利用することで具体的にどんなメリットが得られるのか、ユースケースに沿って考察する。
筆者プロフィール
大野泰弘(おおの やすひろ) 株式会社NTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部
さまざまな企業のコンサルティングを実施するシステムエンジニアとして活動。現在は成長領域であるAI/IoTに注力しており、AI/IoTの現場導入を促進するサービスの企画、開発を担当。
細野泰剛(ほそのやすたか) 株式会社NTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部 主査
トータルVPNソリューション「Master'sONE」のサービス企画、プロダクトオーナーとして活動。現在はAI/IoT部門のサービス企画、開発を担当。
https://www.nttpc.co.jp/service/product/edgemanagement/
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