国内の診断診療支援AIシステム市場を調査、医療へのAI利活用は普及期へ:医療機器ニュース
矢野経済研究所は、国内の診断、診療支援AIシステム市場に関する調査結果を公表した。医療分野におけるAIの利活用は黎明期から普及期に転換しつつあり、その市場規模について、2027年には165億円に拡大すると予測している。
矢野経済研究所は2023年5月29日、国内のMedTech動向を調査し、診断、診療支援AI(人工知能)システム市場に関する調査結果を公表した。
日本では、特に医用画像を用いた画像診断で活発にAIが利用されており、放射線画像分野を中心にAIを利用した医療機器30品目以上が薬事承認または認証を受けている(2023年2月時点)。医療AIプラットフォームの構築も進み、医用画像機器については公的医療データベースが構築されるなど、デジタル基盤の整備が進んでいる。
規制面においても、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえたAI製品の早期承認や、機器の性能向上のための計画変更を簡易化する「IDATEN」制度の導入、DASH for SaMDの策定など、AIを用いた医療機器に対する枠組みづくりに向けた動きがある。これらにより、医療分野へのAIやデジタル技術の活用はますます加速しそうだ。
政策面の後押しもある。2022年度に診療報酬が改定されたことで、「プログラム医療機器等医学管理加算」の新設や、「画像診断管理加算3」の施設要件にAI活用が追加されるなど、デジタル治療への機運が高まっている。政府主導による、医療機器プログラム開発の期間短縮を目指した制度改革なども市場拡大の要因として挙げられている。
診断、診療支援AIシステム市場は今後、ターゲットとなる疾患や診療科の拡大、多様化が進むと見込まれる。特に、海外では既に事例があるデジタル治療「DTx(デジタルセラピューティクス)」にAI技術を活用するといった新たな治療法の開発が期待される。画像や音声、テキストの生成系AIを、医用画像の生成や患者への情報提供に活用する動きも進んでいる。
このように、医療分野におけるAIの利活用は黎明(れいめい)期から普及期に転換しつつあり、同社は2027年の診断、診療支援AIシステム市場規模について、事業者売上高ベースで165億円に拡大すると予測している。
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