機能安全でつまずきの元になりやすい「基本概念」と「用語」を理解する:これだけは知っておきたい機能安全(2)(4/4 ページ)
さまざまな産業機器の開発で必要不可欠な機能安全について「これだけは知っておきたいこと」を紹介する本連載。第2回は、機能安全への対応でつまずきの元となりやすい基本概念と、利用頻度の高い用語について説明する。
機能安全と「フェイルセーフ」「フールプルーフ」の関わり方
安全設計の技術でよく知られるものに、「フェイルセーフ」と「フールプルーフ」があります。この2つは日本でも耳にすることが多く、実際にいろいろな製品に導入されています。このフェイルセーフやフールプルーフが機能安全とどのような関連にあるのかについて、IEC 61508の記載を紹介しながら説明します。
まず、フェイルセーフとフールプルーフはどのようなものなのかを確認しておきましょう。
フェイルセーフは、機械に故障や異常状態が発生した場合に安全側にとどまるようにする安全対策です。例えば、踏切の遮断機の場合、フェイルセーフの考え方で設計された遮断機は、停電時にバーが降りた状態になります。これは、路線に人やクルマなどが侵入できないようにして、これによって安全を確保するためです。フェイルセーフは、遮断機の他にも、倒れると自動で鎮火する石油ストーブ、一定温度以上になると電源が切れるヒーターやトースターなど多くの製品に採用されています。
フェイルセーフは、IEC 61508-1に記載され、機能安全の電気/電子/プログラマブル電子関連においても適用可能な技術となっています。
これに対してフールプルーフは、人が間違った行為や危険な行為をしようとしても、その行為を不可能にする安全対策です。フールプルーフの例で分かりやすいものには、正しい方向でしか充電器に装着できないリチウムイオンバッテリーがあります。エネルギー容量の大きいリチウムイオンバッテリーは、プラスマイナスの極性を間違えて充電を行うと発火や爆発などを起こす危険があります。そこで、多くの充電器ではバッテリーとの接続部分を工夫して、正しい極性でしかバッテリーを装着できないようにしています。フールプルーフの例としては他にも、扉を閉じないと加熱できない電子レンジや、蓋を閉めないとドラムが回転しない洗濯機などがあります。
フェイルセーフと違い、フールプルーフの考え方については、IEC 61508に記載はありません。しかし、想定できる使用上のミスについて検討する際には、積極的に活用すべきリスク低減措置であることは変わりません。
フェイルセーフとフールプルーフは、規格中に記載がある/なしに関係なく、機能安全における有効な安全設計技術といえます。
筆者プロフィール
株式会社セーフティイノベーション(SIL)
東京都町田市に2015年に設立し、主に機能安全設計に関するコンサルサービスを提供する会社(社長:佐藤市太郎)です。産業機器のハード/ソフト開発および機能安全設計の実務経験、知見を生かし、機能安全認証取得を効率よく推進するプロセス、ノウハウの提供、設計実務支援などのサービス業務を行う各産業分野で認証実績のある技術者集団です。国内企業の機能安全規格への準拠を支援するFSEG(Functional Safety Expert Group)の一員として、設立当初から機能安全を通して日本のモノづくりを支援する活動に参加しています。
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