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機能安全の基礎「機械安全規格」とは何かこれだけは知っておきたい機能安全(1)(1/4 ページ)

さまざまな産業機器の開発で必要不可欠な機能安全について「これだけは知っておきたいこと」を紹介する本連載。第1回は、機能安全の基礎となる「機械安全規格」を取り上げる。

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はじめに

 株式会社セーフティイノベーションは、機能安全認証に向けたコンサルタントおよび設計実務支援を行う会社として2015年に設立されました。そして設立以降、産業機械/可変駆動装置/電気的検知保護設備/土工機械/協働ロボット/プロセス産業などの多くの分野において、機能安全認証の取得サポートとともに機能安全開発に携わる多くの技術者の疑問に応えてきました。本連載は、その経験、実績を基に、機能安全の導入における要点をまとめたものです。

 機能安全に関する理解は、たくさんある規格を個別に対処するアプローチでは難しい面があります。しかし、規格をグループ分けした位置関係を知り、さらに各規格の関連や用語などの知識があるだけで、ずっと理解しやすくなります。

 本連載では、理解の助けとなるポイントに触れながら、機能安全の基本から実践にわたり「これだけは知っておきたい」という要点を3回に分けて解説します。

 第1回は、機能安全規格の基礎となる機械の安全規格について説明します。その後、機能安全の基本規格として知られる「IEC 61508」の機械安全規格における位置付けや関連規格を紹介します。また、近年注目を集めているOT(制御技術)のサイバーセキュリティ規格である「IEC 62443」と機能安全との関わりについても説明します。

 本連載が関係される方々の参考になれば幸甚です。

機能安全の基礎となる機械安全規格

 機能安全は、機械に付加された機能によって安全を確保しようとする考え方です。現代の機械は、電子機器を含む多くの装置によって制御されています。機能安全は、それらが正しく働くことによって実現されます。

 機能安全の基礎になるのが、機械系規格類(ISO)と電気/電子系規格類(IEC)を含めた、機械に関する国際安全規格です。そこで、機能安全の説明を行う前に、まず「機械安全」に関する規格の全体像を説明します。

 機械安全とは、機械や装置が壊れたり人が操作ミスを起こしたりしても、技術によって安全を確保する考え方です。機械安全の全体像が把握できると、それを機能安全の理解に応用できます。

3つの規格タイプと構造

 機械に関する国際安全規格には、膨大な種類の機械類に対応する多くの規格があります。

 これらに関連性を持たせ機械安全の中での位置付けを明確にするため、「ISO/IECガイド51」では機械安全の規格をA規格/B規格/C規格にグループ分けし、3つの階層に分類しています。

3層構造になっている機械安全規格
3層構造になっている機械安全規格[クリックで拡大] 出所:セーフティイノベーション

A規格(基本安全規格)

 階層の最上位に分類されるのがA規格です。A規格は全ての機械で共通に使用できる基本概念です。A規格では、機械安全のためのリスクアセスメントやリスク低減の手法など、設計における一般原則を規定しています。具体的には「ISO 12100」が唯一のA規格となります。

B規格(グループ安全規格)

 機械の安全のため、グループごとに要件を定めたのがB規格です。この場合の“グループごと”とは、基本的には産業別のグループと考えて問題ありません。B規格は産業機械、土工機械、その他の各産業分野の機械類で使用されます。

C規格(個別機械安全規格)

 個別の機械ごとに要件を定めたのがC規格です。C規格は個別の機械ごとに存在するので、非常に多くの種類があります。C規格は工作機械、協働ロボット、エレベーター、無人搬送車など、多くの個別製品/機械類で使用されます。

 ISO/IECガイド51はこのような機械安全の概念を俯瞰するガイドラインであり、各階層に含まれる規格についてユーザーが調べる際の参考になるものです。

ある製品の安全性を示す準拠すべき規格は複数ある

 ここで重要なのは、ある製品の安全性を示す場合、準拠すべき規格は複数あるということです。

 まず、基本安全規格であるA規格のISO 12100は必須となります。その上で、産業ごとのB規格、製品ごとのC規格が追加されます。このため、製品の場合には「A規格+B規格+C規格」といった具合に、複数の規格への準拠が求められることになります。

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