機能安全でつまずきの元になりやすい「基本概念」と「用語」を理解する:これだけは知っておきたい機能安全(2)(3/4 ページ)
さまざまな産業機器の開発で必要不可欠な機能安全について「これだけは知っておきたいこと」を紹介する本連載。第2回は、機能安全への対応でつまずきの元となりやすい基本概念と、利用頻度の高い用語について説明する。
機能安全に必須となる用語の理解
機能安全では、マネジメントに関するものから信頼性技術に関するものまで、非常に幅広い分野の多種多様な用語が使われています。機能安全の理解には、この用語を理解することも重要です。用語の意味を正確に把握していないと、その誤解が規格の誤解につながる恐れがあります。また、なじみのない用語が多いと、機能安全規格書などの読解にも時間がかかってしまいます。
特に、機能安全規格書には信頼性技術に関する用語が数多く登場します。ここに登場する用語そのものは、信頼性技術を学んだ人にとってはなじみのあるものです。しかし、学問としての信頼性技術がマイナーであることは否めません。このため、そこで使われている用語も、多くの人にとってなじみが薄いものになっていると考えられます。
用語が明確に理解できていないと、自社製品に関するガイドラインも作成できません。また、用語の読解に負荷がかかり多くの時間が必要な事態は、多くの設計者が機能安全の取り組みでつまずきやすいポイントにもなっています。
機能安全に関する用語は、今ではネットでも簡単に調べられます。用語を理解するには、なじみの薄い単語や用語に出会ったらその都度、自主的に調べる姿勢が必要です。
例えば、「決定論的原因故障(システマチック故障)」は、特定の状況下で必ず発生する故障を指します。機能安全では「人はミスをする」という前提で設計を行いますが、人のミスが機械の故障原因にならないよう、特定の状況を避ける場面で使われることが多いようです。
また「PFD(Probability of Failure on Demand)avg」は、システムでどのくらいの頻度で故障が発生するか、その確率(頻度)を数値化する際に用いる指標です。機能安全では、リスクアセスメントによって製品のリスクを客観的に評価します。その際、PFDavgなどを使った定量化を行い、安全レベルやリスクの客観的な比較を可能にします。ちなみに、他の故障の指標には「PFH(Probability of Failure per Hour)」というものもあります。PFHは機能安全に関する電気制御システムが1時間当たりに故障する確率の平均を示すものです。
用語に関しては、日本の厚生労働省が定義について説明しています。※)その中で、「リスク」「機能安全」「安全関連システム」といった用語についても触れていますので、確認しておきたいところです。以下の表で抜粋して紹介します。
※)「機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針」(2016年厚生労働省告示)
用語 | 説明 |
---|---|
リスク | 機械などによる人(作業者)の就業に関わる負傷または疾病の重篤度および発生の可能性の度合い IEC 61508におけるリスクとは、危害の発生確率と危害の程度の組み合わせ |
機能安全 | 新たに機械などに電気/電子/プログラマブル電子(E/E/EP)制御の機能を付加することによりリスクを低減するための措置 |
安全関連システム | 要求安全機能を実行するE/E/EP制御のシステムの安全関連部 |
安全機能 | 安全関連システムの安全機能において機能故障がリスクの増加に直ちにつながらないないようなシステムの機能 |
要求安全機能 | 機械などによる人(作業者)の就業に関わる危険性または有害性を特定した上でそれによるリスクを低減するために要求される(E/E/EP)制御の機能 |
安全度水準 | 安全関連システムの信頼性の水準であり安全機能を実行するための能力を規定する区分として安全度水準SILとパフォーマンスレベル(PL)が用いられる |
要求安全度水準 | 安全関連システムに要求される信頼性の水準要求安全機能の作動が要求された時に安全関連システムが当該要求機能を作動させる確率であり、その水準を表す指標としてIEC 61508の安全度水準SILとISO 13849のパフォーマンスレベル(PL)が用いられる |
故障 | 安全関連システムやそれを構成するサブシステムに要求機能を実行する能力がなくなること ランダム故障(ハードウェア故障)とシステマチック故障(決定論的原因故障)がある |
表 機能安全でよく使用する用語 出所:「機能安全による機械等に係る安全確保に関する技術上の指針」(2016年厚生労働省告示) |
こういった確認作業によって各用語の意味するところが明確になります。機能安全における「安全」が一般的に使われる「安全」と意味合いが異なるように、ニュアンスや適用される範囲が異なる単語や用語が機能安全では使われることがあります。はじめに用語の定期を確認すれば、その誤解を原因とする理解の間違いを回避できます。
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