熟練者の経験知を持つAIが切削工具を適切に管理、モリマシナリーなど3者で開発:工作機械(4/4 ページ)
モリマシナリーは熟練者の経験知からスマート工場化を実現する切削工具管理システム「AI TOOL SOMMELIER」を2024年度に発売する。同年度の売上目標として1億円を掲げている。
AIがエンドミルの摩耗状況を予測
「熟練者ノウハウを伝承するAIツールソムリエ実証機開発」は、モリマシナリーが担当し、「工具摩耗を高精度に可視化する撮像システムの構築」と「最適工具選定システムとAIツールソムリエ実証機の融合」を行った。
「工具摩耗を高精度に可視化する撮像システムの構築」では、2020年度は既存のツールプリセッターにより撮像の問題点を洗い出した。2021年度は、洗い出した問題点を解消し、鮮明な画像を撮像できる高精度撮像システムのTOOL COLLAGEを開発した。2022年度は、TOOL COLLAGEの製品化に向けて、操作性と意匠性を高め、ターゲット価格を実現するためのコスト削減を図ったTOOL COLLAGEの新タイプを開発しただけでなく、欠陥検出モデルと摩耗予測モデルの商品化への問題も整理した。
小倉氏は「2022年度に開発したTOOL COLLAGEはエンドミルの刃先の撮像に特化したシステムで、既存のツールプリセッターが持つツーリング工具の測定機能を省くことにより大幅なコスト削減を達成した。一般的な加工現場はツーリング工具の測定機器を持っていることが多いため、そういった現場に提案できると考えている」と話す。2023年度はTOOL COLLAGEの駆動モーター(5軸)をサーボモーター化し、両備システムとともに他の種類やサイズの工具でも使えるように欠陥検出モデルと摩耗予測モデルの機能も拡張する見込みだ。
欠陥検出モデルと摩耗予測モデルはサブスク展開も視野に
「最適工具選定システムとAIツールソムリエ実証機の融合」では、2020年度に統合実証機としてTOOL SOMMELIER MINIの設計/製作を行った。2021〜2022年度にかけて、各地の開発拠点で、岡山大インキュベータの研究室内にあるツールソムリエを安全に使えるようなデータ通信環境を構築するべく、TOOL SOMMELIER MINIに接続した研究室内のハードディスクをネットワーク接続した。
2022年度は「メカトロテックジャパン2021」などさまざまな展示会にツールソムリエを出展しニーズを把握。さらに、欠陥検出モデルと摩耗予測モデルを搭載した高性能PCを接続したTOOL SOMMELIER MINI、ツールプリセッター、TOOL COLLAGEで使用した工具の位置と状態を確かめられるビュワーソフトウェアも開発した。2023年度は統合実証機の商品化に向けて検証と課題整理を行う予定だ。
TOOL SOMMELIER、TOOL SOMMELIER MINI、ツールプリセッター、TOOL COLLAGEで使用した工具の位置と状態を確かめられるビュワーソフトウェア[クリックで拡大] 出所:モリマシナリー
今後は、2023年10月にポートメッセ名古屋で開催予定の「メカトロテックジャパン2023」で欠陥検出モデルと摩耗予測モデルのプロトタイプ版を出展し、展示会で顧客ニーズの集約を実施し、商品化に向けての足掛かりとする予定だ。欠陥検出モデルと摩耗予測モデルはサブスクリプションサービスでの販売も視野に入れて検討している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AIで切削工具の欠損や摩耗を検知、工具寿命の最適化でコスト削減
THKは、製造業向けIoTサービス「OMNIedge」の工具監視AIソリューションの提供を開始する。工具の交換ロスや、不良、手直しロスをAIで削減する。 - 軽切削から重切削まで対応する同時5軸加工機、2パレットチェンジャをオプションで提供
ヤマザキマザックは、幅広い加工と自動化に対応する同時5軸加工機「VARIAXIS i-700 NEO」を発表した。新型主軸や省スペース型2パレットチェンジャをオプションで提供し、軽切削から重切削までの幅広い加工や自動化に対応する。 - 切削加工コンテスト受賞作品を発表
DMG森精機は、「第15回切削加工ドリームコンテスト」の受賞作品を発表した。日本国内で加工業に携わり、切削型工作機械、先端加工機を使用している企業、学校、研究機関を対象にしたコンテストとなる。 - 精密切削加工で作られた金属製メカニカルベーゴマに入門モデル登場
スピニングトップは、CNC複合旋盤を用いた精密切削加工技術によって製造した金属製組み立て式メカニカルベーゴマ「メカベー」シリーズのエントリーモデル「メカニカル・ベイ」を2021年9月1日から販売開始する。 - 切削加工のエース! フライス加工とマシニングセンター加工の技術
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第5回は、「フライス加工」と「マシニングセンター加工」について取り上げる。 - 切削量従来比1.2倍、生産性13%向上、JTEKT初の横形マシニングセンタ発売
開発に際しては「価格を削れ、品質は削るな」がキーワードだったそうです。