NTTと三菱電機がロボットアームの持続的な遠隔操作を実証、力触覚情報も伝達:FAニュース
日本電信電話と三菱電機は、操作が困難だったロボットアームを用いた作業を、遠隔地から違和感なく持続的に操作できることを実証した。ネットワークなどの連携制御技術と遠隔操作技術を組み合わせている。
日本電信電話(NTT)と三菱電機は2023年5月16日、これまで操作が困難だったロボットアームを用いた作業を、遠隔地から違和感なく持続的に操作できたことを発表した。NTTのネットワーク、コンピュート基盤の連携制御技術と、三菱電機の遠隔操作技術を組み合わせた実証実験によるもの。力触覚情報を色情報に変換する技術を用いて、機器数が少ないシンプルなデバイス構成で力触覚情報の伝達が可能だ。
NTTは今回、APNのネットワークで2地点間を複数経路で結べる環境を用意。エッジサーバでの処理時間とネットワークの遅延時間をリアルタイムに状態把握し、End-to-Endでの遅延時間が性能要件を満たさなくなる場合には、別の経路やサーバ処理に切り替えて安定した低遅延サービスを提供するネットワークと、コンピュート高速クローズドループ制御技術を開発した。
三菱電機は、視覚と力触覚の感覚間の相互作用を活用した「Visual Haptics」を開発。Visual Hapticsをロボット内からエッジサーバ上での実装に変更し、ロボット側で必要な処理負荷を軽減した。また、エッジサーバの切り替え動作にも対応できるVisual Hapticsも開発した。
実証実験では、NTT武蔵野研究開発センター(東京都武蔵野市)にディスプレイとロボット操作用デバイスを、NTT横須賀研究開発センター(神奈川県横須賀市)にロボットを配置。APNを模擬したネットワークで2拠点間を接続し、遠隔で操作する実験用ネットワークを構築した。ロボット側で撮影したカメラ映像には、力触覚情報をVisual Hapticsで付加しているため、視覚的に力触覚情報を確認しながら操作した。
その結果、品質が悪化してから約100ミリ秒後には切り替え制御が完了。さらに、力触覚などの感覚情報を遠隔に伝達することで、違和感なく操作できた。
実証実験では、アシスト機能付きの遠隔操作で高度な作業ができ、場所を問わず作業の幅を広げることが期待できる成果を得られた。今後は適用可能領域を広げ、遠隔手術や遠隔設備修理など、場所にとらわれない新たな働き方の具現化を目指す。
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