1人暮らしのための食洗機、パナソニックが「SOLOTA」に到達した理由:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(26)(4/4 ページ)
食洗機フリークである筆者は、1人用の食洗機“SOLOTA”こと「NP-TML1-W」が出たというニュースに注目した。1人暮らしに食洗機というアプローチが実に面白い。パナソニック くらしアプライアンス社の担当者に開発背景などを尋ねた。
メーカー自身がサブスクに乗り出す理由
――家電サブスクっていうのは数年前からいろいろ話題になっているところなんですが、今回メーカーが直接サブスクをやるっていうところへ踏み出しました。この直接参入の理由はどういうところにあるんでしょうか?
山本 特に今回のTML1は単身の方に特化した商品ですが、こうした顧客層は生活スタイルが変化したり、転居も頻繁に行ったりということが想定されます。製品を買い切るよりも、その家電を使いたい期間だけ使うという新しい価値観を求める方に対して、販売だけではないアプローチはどうあるべきかという中で、今回サブスクを導入させていただいております。
家電のサブスク専門事業者を経由する方法もあるとは思うんですが、やはりメーカーが直接行うことによって、顧客とのダイレクトコミュニケーションといいますか、実際使っていただいてる顧客のご意見、どういった理由で選んでいただけてるかをつかみやすくなります。また顧客に対しても、メーカーとしてきちっと保証ができる新品を確実にお届けできるといった利点があります。
――なるほど。製品のWebサイトを拝見すると非常にサブスクが好評なようで、お届けに若干時間がかかる旨をご案内されてますね※。
※【編集注】取材当時。
山本 その点に関しては申し訳ございません。私どももちょっと思っていなかったぐらい、かなり計画を大幅に上回る反響をいただいておりまして。皆さまをお待たせしているところが本当に心苦しいんですけれども、なるべく1日でも早くお届けできるように日々調整しているという状態になっております。
――やっぱり単身者向けの商品とサブスクって、相性がいいと思うんですよね。気軽に使ってみようかなっていう気分になるところは大きそうです。
山本 TML1は4万円を切る価格にはなってますけれども、一人暮らしの方にとってはなかなかすぐ決断できる金額でもないと思います。特にまだ新入社員とか社会人2〜3年目までの方だと、やはり自分やお友達との交友関係でお金を使う年代です。そこに月額1290円のサービスがあれば、自分には合わなかったから返却しようとか、使ってみて意外とよかったらそのまま使い続けるとかもできます。これまで使用経験がない方にとって、金額の多寡を判断することが難しい家電であるという立ち位置としては、非常に有効なのかなと思います。
筆者が食洗機を使い始めた理由は、食器用洗剤で洗うと手荒れがひどく、仕事にも影響が出るからであった。案外そんな理由から食洗機のありがたみを感じるケースも多いのではないだろうか。
食器の量も、人生のステージごとで変わってくる。そう考えると、ビルトイン型よりも卓上型のほうがフレキシブルに対応できるし、3年程度でモデルチェンジできるサブスクのほうがメリットがあるように思える。
筆者は4人家族だが、現在は2人用の小型食洗機をスピードモードで数回回すという使い方をしている。子どもが大きくなると、お弁当が戻ってくるタイミングが違うとか、朝の食事が通学時間ごとにバラバラといった事情があり、4人分がそろうまで待っているといつまでも洗えないからである。
食洗機は、キッチンにもともと付いているかいないかでしか選択肢がないと思われてきたが、卓上型では1人からファミリーまで、幅広いラインアップがそろった。今後は洗濯機や冷蔵庫並みに、1人暮らしでも必須の商品となっていくのかもしれない。
筆者紹介
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手掛けたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
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