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1人暮らしのための食洗機、パナソニックが「SOLOTA」に到達した理由小寺信良が見た革新製品の舞台裏(26)(3/4 ページ)

食洗機フリークである筆者は、1人用の食洗機“SOLOTA”こと「NP-TML1-W」が出たというニュースに注目した。1人暮らしに食洗機というアプローチが実に面白い。パナソニック くらしアプライアンス社の担当者に開発背景などを尋ねた。

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「使うための手間」を省き、初心者でも使いやすく

――初めて食洗機を使う人は、どうやって食器をカゴの中に配置したらいいんだろうっていうのが、よく分からないところがあると思うんですよね。あれがうまくいかないとちゃんと洗えなかったりしますし。

 カゴの中の食器を立てるためのピンの部分ですね。ここはできるだけゆとりを持たせています。ガチガチに固定するのではなくて、食器の形状によって置き方が工夫できる余地を残す、そういう基本思想で設計しています。メインの大きいピンの間に小さいピンを設けていますが、これを使って食器の姿勢を調整できるようになっており、形状の違う食器に対応するための工夫です。


カゴの作りにも細かい工夫が[クリックして拡大]

――これまで貴社の卓上型って分岐水栓で水道をつなぐものがほとんどで、給水タンク型って後発になりますよね。それで今回画期的だなと思っているのが、給水タンクを着脱式にして、水を入れたら下にはめ込めばいいって構造がすごいなと思いました。

 従来型のタンク式ですと、付属の給水カップを使って何回も水を入れないと満タンにならないっていう商品も多くて。ネットの口コミを見ると、何回も給水カップから注ぐのがめんどうで、自作のアタッチメントを使っている事例もあるようです。やはり、「手間を削減するための食洗機」を使うための手間はできるだけ軽くしないといけないだろうと、着脱式タンクを選びました。


タンクを着脱式にして、底部にはめ込む構造[クリックして拡大]

松本 それと、水を入れるために何か別の容器を置いておかなければいけないという、そんなスペースも1人暮らしではもったいないでしょう。この食洗機はサイズが小さい分、使う水の量も少なくなっていますので、1回分の給水は1回で完了させるようにしたかったというのがあります。

 実はこの着脱式タンク構造は、電子レンジにヒントがありました。一部の電子レンジには、スチームで調理するための水を入れるタンク構造があるんです。重たい水を持ち上げて上から投入する方式ではなく、できるだけ腕を上げないで給水ができるようにならないかなと考えたときに、ここから着想を得ました。

――なるほどね。それから今回消費電力量にも注目してみたんですけど、これ消費電力が上位機種の半分以下(230Wh)になってますよね。普通は600〜700Whぐらいあるわけですが、じつはうちでも食洗機を回していて、電子レンジや炊飯器を同時に使うとキッチンのブレーカーが落ちるというのが悩みで。これ、こんなに消費電力がカットできた理由ってどういうところにあるんですか。

 これはコンパクト化を突き詰めたことによる副産物でもあるんですけども。まず、そもそも洗浄対象物が少ないので、十分な洗浄性能を少ない水量で実現できたのが理由の1つです。ヒーターで温める水の量が少なければ、その分消費電力量が抑えられますので。

 さらに小型化したヒーターを使いこなすというところで、動作シーケンスを工夫しています。洗浄プロセスの途中で水の噴射を止めて、水を温める昇温工程を設けながら、噴射して止めて温めてを繰り返し、水の昇温をできるだけ早くするようにしています。

 食器点数の少なさと庫内容積の小ささを踏まえて、ヒーター乾燥ではなく送風乾燥方式を採用していることもあり、総合的に消費電力量を抑えることに成功しました。

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