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日立スクロール圧縮機が実用化40周年、開発者が短期間で製品化できたワケを語るモノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

日立ジョンソンコントロールズ空調は、日立スクロール圧縮機が実用化40周年を迎えたことを発表した。日立スクロール圧縮機は、世界で初めて実用化された空調用のスクロール圧縮機で、現在も改良が施され、同社の空調製品に搭載されている。

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往復動形圧縮機より優れた点とは?

 背圧支持機密機構により、圧縮過程の中間圧力のガスを機体の背圧室に導き、旋回スクロールを固定スクロールに自動的に「強すぎず、弱すぎず」の力で押し付け、ガスの漏れを抑えて高効率化も実現している。

 さらに、全密閉圧縮機として背圧支持機密機構に対応するために、内部圧力である高圧を旋回スクロールの背圧に利用する「高圧シェル方式(一部中間圧)」を採用し、密封した潤滑油などの漏れを防ぐ軸受シール機構も取り入れた。軸受に送られる潤滑油が途切れた際に、金属製の軸受が発熱することを防止するために、潤滑性に優れ発熱しにくい樹脂含侵軸受を採用している。

 こういった取り組みにより、同製品は、従来の往復動形圧縮機に比べ、体積で40%小型化、重量で15%軽量化を実現しただけでなく、平均10%の全断熱効率向上や約5デシベル(dB)の騒音低減を達成した。


冷凍空調学会 参与 圧縮機技術委員会 委員長で東條技術士事務所 所長の東條健司氏

 冷凍空調学会 参与 圧縮機技術委員会 委員長で東條技術士事務所 所長の東條健司氏は「1973年に日立製作所に入社し、3年目の1975年に日立スクロール圧縮機の開発プロジェクトに参加した。プロジェクトチームに参加する社員の大半は20代で、若手メンバーが主体となり、清水事業所で、スクロール圧縮機の文献を調べ、手書きの図面をもとに試作室で試作品を製作した。それを組み立てて、自作した試験装置で運転していた。それが、スクロール圧縮機の構造を把握するのに役立ち、短期間での製品化につながった」と話す。

 日立製作所は、1980年に日立スクロール圧縮機のプロトタイプを日立技術展で発表し、1983年に「パッケージA/C用スクロール圧縮機」としてヒートポンプ式天井つり型パッケージ形空調機に搭載し、販売開始した。なお、三菱電機と松下電器産業(現パナソニック)が1986年に空調用のスクロール圧縮機を製品化するなど、熾烈な開発競争が行われていたという。

 また、40周年を記念して日立スクロール圧縮機への社員によるサイン会が行われた後、会場を移して、スクロール圧縮機を生産している清水事業所の第1工場や空調機器を製造している第4工場、日立ジョンソンコントロールズ空調の製品が展示されているショールームが披露された。


日立スクロール圧縮機にサインするCEOの秋山氏と東條氏[クリックで拡大]

日立スクロール圧縮機の生産数は月産8000台

 第1工場は、旋回スクロール、固定スクロール、クランク軸、フレーム、ハウジングを加工する「機械加工エリア」、ケーシング、フラキャップ、ソコキャップを扱う「製缶エリア」、組み立てを行う「組立エリア」から成る。日立スクロール圧縮機の生産数は月産8000台で、大半は第4工場に搬送され空調機器に組み込まれ、一部はそのまま出荷されるという。

 機械加工エリアは、第1〜4の精密加工室4部屋で構成され、加工を行った旋回スクロール、固定スクロールなどは、無人搬送車(AGV)で組み立てエリアに送られる。組み立てエリアで各部品が組み立てられた後、製缶エリアでケーシング作業や全数検査などが行われる。


第1工場の内観[クリックで拡大]

製缶エリアでのケーシング作業[クリックで拡大]

 第4工場は、板金加工、塗装、配管加工、パッケージエアコンの組み立てを行っており、店舗/オフィス用エアコン「省エネの達人プレミアム」やビル用マルチエアコン「FLEXMULTI(フレックスマルチ)」などの組み立てラインを備えている。

 一例を挙げると、FLEXMULTIの組み立てラインでは、まず、熱交換器の曲げ加工を行い、ろう付けして、気密試験を実施する。続けて、日立スクロール圧縮機とタンクをろう付けした後、配管をろう付けする。次に、気密試験を実施し、電気箱を取り付け、配線作業を行う。そして、真空引き(真空ポンプを使用してエアコンの配管内部を真空にする作業)を行い、油と冷媒を封入し、商用試験を実施して、梱包する。

 ショールームは2020年にオープンし、日立スクロール圧縮機の生産品第1号だけでなく、日立スクロール圧縮機の設置位置など内部構造を確かめられるスケルトンのFLEXMULTIを展示している。


配線作業が行われる「FLEXMULTI」[クリックで拡大]

スケルトンの「FLEXMULTI」[クリックで拡大]

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