NVIDIAの最新AI開発環境を無償で試せる、マクニカの「AI TRY NOW PROGRAM」:人工知能ニュース
マクニカ クラビス カンパニーは、最新のNVIDIAソフトウェアプラットフォームを自社への導入前に無償で検証できる「AI TRY NOW PROGRAM」を構築し、サービス提供を開始したと発表した。
マクニカ クラビス カンパニーは2023年5月10日、東京都内で会見を開き、「NVIDIA AI Enterprise」や「NVIDIA Omniverse Enterprise」をはじめとする最新のNVIDIAソフトウェアプラットフォームを自社への導入前に検証できる「AI TRY NOW PROGRAM」を構築し、サービス提供を開始したと発表した。無償で利用できることが最大の特徴で、検証期間は2週間まで。既にAI TRY NOW PROGRAMのWebサイトのフォームから申し込み可能な状態になっている。初年度の利用社数は20社を見込んでおり、そのうち3社にNVIDIAソフトウェアプラットフォームに基づく開発環境の導入を目指す。
NVIDIAは、NVIDIA製GPUを用いたAI(人工知能)の開発環境を容易に運用できるようにするソフトウェアスイートであるNVIDIA AI Enterpriseや、産業用メタバース向けにデジタルツイン環境を構築できるNVIDIA Omniverse Enterprise、ロボット開発向けのシミュレーション環境「NVIDIA Isaac Sim」などさまざまなソフトウェアプラットフォームを展開している。AI TRY NOW PROGRAMでは、マクニカ側でNVIDIAの最新ハードウェアに仮想化プラットフォームを組み込み、NVIDIA AI Enterprise、NVIDIA Omniverse Enterprise、NVIDIA Isaac Simを利用できるようにしたデータセンターをインフラとして用意しており、顧客はインターネット経由でアクセスする形で検証を行う。
マクニカはこれまでも、NVIDIAのGPU製品を中心とするハードウェアや、AI開発環境であるNVIDIA AI Enterpriseなどを販売してきた。今回のAI TRY NOW PROGRAMでは、AI開発環境だけではなく、NVIDIA Omniverse EnterpriseやNVIDIA Isaac Simを活用したデジタルツインにおけるAIの実証環境も併せて提案する狙いがある。マクニカ クラビス カンパニー 第1技術統括部 技術第3部 部長の北島祐樹氏は「NVIDIAは、さまざまなソフトウェアプラットフォームを組み合わせで価値を向上していくことを推し進めている。AI TRY NOW PROGRAMは、このNVIDIAのグローバル戦略に即したものだ。また、当社は製造業の顧客が多いこともあり、工場などでデジタルツインを活用したいという要望に応えられるようにした」と語る。
また、AI TRY NOW PROGRAMは、製造業をはじめ多くの国内企業がAI導入を検討しているものの、検討フェーズで足踏みしたり、PoC(概念実証)から抜け出せなかったりという問題の解決に貢献するという狙いもある。「AI導入におけるPoCのプロセスにはさまざまなステップと課題がある。特に、AIを活用した製品開発を効率良く進めたいエンジニアと、企業のITインフラに合わせてAI開発基盤を構築するIT管理者との間で衝突が発生し、本番導入を見据えた最終段階に近いPoCを実施できず、初期のPoCから抜け出せないことが課題になっている。AI TRY NOW PROGRAMは、本番導入を見据えた環境を自社で準備することなく検証を行える、課題解決のスモールステップとなるサービスだ」(北島氏)という。
なお、AI TRY NOW PROGRAMの構成としては、アプリケーションとしてNVIDIA AI Enterprise、NVIDIA Omniverse Enterprise、NVIDIA Isaac Simを利用できる他、オーケストレーション/マネジメント層でGPUのリソース管理を行う「Run:ai」やVMwareのハイパーバイザー、VMwareとRed HatのKubernetesを用意している。ハードウェアは、NVIDIA Omniverse Enterprise向けでは「NVIDIA A100 Tensor コア GPU」と「NVIDIA DGX システム」、NVIDIA Omniverse EnterpriseとNVIDIA Isaac Sim向けでは「NVIDIA A40 GPU」を利用できる。さらに、GPUサーバをクラスタで構成する際に有効なNVIDIAのインターコネクト製品も活用できるとしている。
2週間まで利用が無償のAI TRY NOW PROGRAMだが、マクニカからのコンサルテーションやサポートなども有償で提供する。顧客向けの事業展開が軌道に乗ってからは、パートナー企業にも公開してエコシステムの検証強化を進めるとともに、サービス内容の追加なども進めていく方針である。
AI開発におけるPoCから量産化への移行が進まない日本市場
会見には、マクニカ クラビス カンパニー プレジデントの伊藤啓介氏、NVIDIA 日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝氏も登壇した。
伊藤氏は「マクニカは専門商社からサービスソリューションカンパニーへの進化を目指しており、AIは当社が提供する付加価値を大きく増大させるものだ。今回発表するAI TRY NOW PROGRAMによってNVIDIAとの連携をさらに深めながら、顧客への迅速なAI導入に貢献していきたい」と語る。
大崎氏は「AI開発におけるPoCから量産化への移行は、グローバルで見ても難しいという調査結果が出ているが、日本市場はそれに輪をかけて厳しい状況にある。NVIDIAの最新ソフトウェアプラットフォームを最新ハードウェアで検証できるAI TRY NOW PROGRAMとマクニカのコンサルテーションやサポートは、日本市場におけるAI開発のPoCから量産化への移行に大きく貢献するだろう」と述べている。
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