ジェット燃料サプライチェーン全体を脱炭素化、航空会社への供給は国内初:脱炭素
INPEXと出光興産、ANAは、「G7広島サミット」の開催に合わせて、2023年5月中に広島空港を発着陸するANAの全便を対象にジェット燃料サプライチェーン全体の脱炭素化を行い、CO2排出量実質ゼロのフライトを実現する。
INPEXは2023年5月1日、出光興産や全日本空輸(ANA)とともに、同月19〜21日に開催予定の「G7広島サミット」の開催に合わせて、ジェット燃料サプライチェーン全体の脱炭素化に取り組むと発表した。この取り組みにより、ANAが同月中(1〜31日)に運航する広島空港を発着陸する全ての便(予定)を対象にCO2排出量実質ゼロのフライトを実現する。
今回の取り組みでは、INPEXと出光興産が、原油の生産からフライト運航時の消費に至るジェット燃料サプライチェーン全体で発生するCO2全量を実質ゼロ化するべくカーボンクレジットを調達し、出光興産がカーボンニュートラル化されたジェット燃料としてANAに供給する。サプライチェーン全体のCO2排出量全量を実質ゼロ化したジェット燃料の航空会社への供給は国内初の取り組みだという。
カーボンニュートラルジェット燃料の供給の流れは以下の通り。まず、INPEXがアラブ首長国連邦アブダビ首長国で生産する同社権益マーバン原油を出荷。次に、マーバン原油を調達した出光興産が製油所でジェット燃料を精製する。
その後、INPEXおよび出光興産がカーボンクレジットの調達を行い、ジェット燃料のサプライチェーン全体で排出されるCO2全量をゼロとする。続いて、出光興産がカーボンニュートラル化されたジェット燃料をANAに供給して、ANAがカーボンニュートラルフライトを実現する。
当該カーボンニュートラルフライトの実現では、国際民間航空機関(ICAO)が定めた「国際民間航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIAスキーム)」に基づき、ジェット燃料のサプライチェーン全体のCO2排出量に対して、CORSIAスキームで適格認証を受けた同排出量相当のカーボンクレジットを調達してニュートラル化を行っている。
なお、このカーボンニュートラル化の手順および完了の妥当性について、ソコテック・サーティフィケーション・ジャパンによる第三者認証を取得し、カーボンニュートラルジェット燃料供給の信頼性をより一層高めているという。
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