エアコンの国内生産回帰を半年で実現、日立の「白くまくん」が目指す地産地消:メイドインジャパンの現場力(38)(3/3 ページ)
日立ジョンソンコントロールズ空調は、栃木事業所において、同社の日立ルームエアコン「白くまくん」の主力製品「スリムモデル」の出荷式を行うとともに、同事業所内に新設したスリムモデルの生産ラインを報道陣に公開した。
新ラインは画像認識システムなど新たな工夫で生産効率向上を図る
実は白くまくんのスリムモデルは、2020年に中国工場に生産を移管したばかりだった。今回の国内生産回帰における新ラインは、かつてスリムモデルの室内機を生産していた第5工場内のスペースを活用して導入している。ただし、2020年と同じライン構成は取っておらず、中国工場のラインと比べても新たな工夫を取り入れることで、さらなる生産効率の向上を図っている。
スリムモデルの室内機の新ラインは、部品組み立てラインと総組み立てラインから構成されている。部品組み立てラインは、第5工場建屋内2階部分にあるプレミアムXシリーズの部品組み立てラインと隣り合う形で設けられた。
部品組み立ては、フィルターベース組み立て、ドレンパン組み立てなどの工程を各作業者が担当するセル生産によって行われている。フィルターベース組み立てでは、1人で作業が完結できるように工数短縮を図ることで部品の抜けなどが起こらないようにした。全数について可動確認を行っているので品質向上にもつながっている。
ドレンパン組み立ては、断熱材を貼り付けるための接着剤であるホットメルトの塗布について、手動から装置に替えることで作業内容を平準化し品質を担保しやすくした。ハーネス取り付け作業も、「3軸可動セルロボ」という仕掛けを導入して作業動線を最適化することで作業者の動作量を約20%減らしている。
これらの部品を室内機に組み上げていくのが総組み立てラインである。総組み立てラインでは、スリムモデルの清潔機能であるファンお掃除ロボとフィルターの間に必要な隙間の距離と、ファンお掃除ロボのブラシへのごみ付着を画像認識システムで確認する「ファンロボ検査装置」を導入した。この検査工程は従来は手作業で行っていたという。この他、マーキングについても自動化を図っている。
ラインそのもの以外では、室内機のさまざまな樹脂部品の金型を一から製作したことが挙げられる。セル屋台の作業台や治具の用意まで含めて、60以上の金型が必要だった。泉田氏は「基本的には中国工場と同じものを栃木事業所にも用意するということで、国内外の金型メーカーの協力を得て間に合わせることができた。BCP(事業継続計画)を考慮して、ダブルツーリング、並行生産が可能な体制を目指した。今回、栃木事業所の新ラインをマザー工場に位置付けて、新たに導入した工夫は海外にも順次展開していきたい」と述べている。
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