エアコンの国内生産回帰を半年で実現、日立の「白くまくん」が目指す地産地消:メイドインジャパンの現場力(38)(2/3 ページ)
日立ジョンソンコントロールズ空調は、栃木事業所において、同社の日立ルームエアコン「白くまくん」の主力製品「スリムモデル」の出荷式を行うとともに、同事業所内に新設したスリムモデルの生産ラインを報道陣に公開した。
コスト競争力のある地産地消とともに品質で勝負
白くまくんのスリムモデルは、「凍結洗浄」「ファンお掃除ロボ」「カビバスター」など人気の清潔機能を搭載するとともに、本体高さが24.8cmとスリムで、エアコン上部のスペースが3cmあれば設置可能であり、マンション窓部のサッシ上部やカーテンレール上部への設置が容易なことを特徴としている。このため、寝室や書斎、子ども部屋などの各部屋に設置するのが最適であり出荷台数も多い。
今回のスリムモデルの国内生産回帰は、日立ジョンソンコントロールズ空調にとって「RAC20-PAC20」で掲げるルームエアコンとパッケージエアコンの国内シェア20%の達成に向けた重要な取り組みとなる。泉田氏は「当社は、コスト競争力のある地産地消がグローバルの方針となっており、新ラインにはさらなる工夫を盛り込むことで品質で勝負していきたい」と強調する。
地産地消によって、安定した製品供給と迅速に需要に応えるリードタイム短縮を実現できる。また、日立製作所の栃木工場発足から80周年を迎える中で、生産量増加と雇用増加という形で地域経済にも貢献できる。「人の生命や健康を預かるエアコンは社会インフラといえるが、2022年夏は“エアコン難民”という言葉が出るほど、エアコンを買えない、修理できないという問題が発生し、当社も上海ロックダウンなどの影響で十分な製品供給ができずにご迷惑を掛けた。そこで、スリムモデルの国内生産回帰に向けたプロジェクトを急ぎ進めた」(泉田氏)という。
2022年10月に決定した同プロジェクトは2023年夏に間に合わせることを目標としていたが、スリムモデルの国内生産は室内機が同年3月8日、室外機が4月18日に開始しており、繁忙期の夏を迎える前に準備を整えることができた。今回新たに導入した新ラインでは、室内機の生産を行っており、室外機は既存のプレミアムXシリーズや200Vを用いる大型室外機のラインを活用している。追加雇用は、現時点で100人以上となっており、繁忙期には200人以上に増やす見込みだ。
スリムモデルの国内生産移行により、日立ジョンソンコントロールズ空調の国内市場向けルームエアコン生産台数の50%以上が栃木事業所で生産されることになる。また、リードタイム短縮については、中国工場で生産して船便で輸入する場合は約27日かかっていたところを、国内生産であれば一部島しょ地域を除いて5〜6日以内で届けられるため、3週間の短縮になる。
また、国内生産移行プロジェクトは、設計から生産管理、マテリアルコントロール、調達、生産技術、開発評価センター、製造技術管理、製造、品質保証、人事・総務、経理に至るまで、関係する全部門によるワークグループで推進した。泉田氏は「室内機と室外機それぞれについて問題点の洗い出しと進捗確認を毎日実施した」と説明する。
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